臨界期とチリケの灸
高齢者の背中をずいぶん見る事が仕事上多いのだが、ちょうど頸椎の下部から胸椎の上部あたりに火傷の跡、お灸のあとがのこっている方が多く、話をきくとよく子供のころにされたそうだ。
チリケのお灸といって文字通り悪い気、ケを散らす身柱というツボにお灸をするのだ。
今ほど小児科もワクチンもなく、感染症も多く乳幼児死亡率の高かった時代、生まれて間もない乳児から幼年期、学童期の子供まで幅広く身柱にお灸をすえた時代や地域があった。もちろん今風にいえば子供の未発達な自律神経を整えたり、ヒートプロテインショックかな?免疫力をあげたり、陽気を上げるところなので、くびの座りの遅い子や未熟児を抱えた母親はお灸に我が子の健康と成長の祈りを込めたことだろう。
心理学に、発達に大きな影響をおよぼす出生直後の特殊な経験として、初期経験というのがある。そしてその初期経験が成立するわずかな期間を臨界期と呼ぶ。
アヒルやカモが孵化してすぐみた動く対象を追いかけるのは刻印付けをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。
ちょっと勝手すぎる解釈かもしれないが、キリスト教の洗礼で生まれた赤ん坊を水に浸すのをどこかで見たように記憶するのだが、これは信仰の表明でもあり、刻印付ける(水≒羊水、子宮にはいってもういちど新しく生まれる)ようなイメージが湧く。
また、三つ子の魂百までというのをもう少し実証的に調べると人間にも臨界期というものがあってあとからかえにくいよ、可塑性が低いよというわけだろう。
アマラとカマラという狼にそだてられた子供は言語獲得や二足歩行の獲得が困難だったとか。
さて鍼灸ファンの背中に灸跡のあるご高齢の方はお灸のおかげで長生きできたのかどうかを確かめるデータは持ち合わせていないが、鍼灸院に今でも通ってくれているのはもちろん効果の実感もあるが、もしかしたら臨界期やどこかで鍼灸の洗礼を刻印付けられたからなのかなーと思ってみたりするのだ。
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