
現状維持の危険性~コンフォートゾーンからの脱却~
皆様こんにちは。税理士のイシヅカです。
本日は、「現状維持の危険性~コンフォートゾーンからの脱却~」というテーマでお話しいたします。
中々に抽象的なテーマですが、「事業が軌道に乗ったものの、このままでいいのか…」と悩みを抱える経営者・事業主の方に向けて、
数多くの経営者と接し、自身も税理士事務所の経営を行うイシヅカが、日々意識している持論を展開していきたいと思います。
◇ コンフォートゾーンは長居無用

現状維持か?成長か?を考える上で、
「コンフォートゾーン」という概念を押さえておきたいと思います。
● コンフォートゾーンとは?
コンフォートゾーンとは人が成長する過程を考える際の精神概念の1つで、
その人が慣れ親しんでいてストレスや不安を感じずに過ごせる、心理的な安全領域のこと。を指します。
慣れ親しんだ職場や、付き合いの長い友人とのコミニティなど、精神的負担が極めて少ない環境を総じて示す概念です。
事業に置き換えると、軌道に乗り切った状態はまさにコンフォートゾーンにいる状態。と言えるでしょう。
この概念にはコンフォートゾーンの他に、
・ラーニングゾーン:ストレスを感じるが、自己成長を実現できる領域。
・パニックゾーン:過剰なストレスや不安が生じている領域。
が存在し、何か新しい分野に挑戦し、成熟する際には、
パニックゾーン→ラーニングゾーン→コンフォートゾーン
の順で精神状態が移り変わり、成長していく。とされています。
● 推奨される領域はラーニングゾーン
コンフォートゾーンという言葉は、どちらかというとネガティブな要素として使用されることが多く、
「コンフォートゾーンに長く留まることなく、ラーニングゾーンを常に目指すべき」と推奨されることが多いです。
ストレスを避けるのが人間の本能ですので、
何も意識していなければストレスが最も少ないコンフォートゾーンに留まり続けてしまう。という訳ですね。
新しい事にチャレンジする機会が特に多い経営者の方は、
自身の心理状態が無意識のうちにコンフォートゾーンへ引っ張られてしまう。
という意識を持っておくといいでしょう。
● コンフォートゾーンの長期滞在が懸念される理由
そもそも現状維持。コンフォートゾーンの長期滞在はなぜ懸念されるのか?
について、イシヅカの主観を交えて考えたいと思います。
結論、イシヅカは「現状維持=衰退」と考えております。
理由としては、自身の現状が維持できたとしても、外部環境は変化し続けるから。となります。
今現在、十分な収益が確保でき、それが今後も継続できたとしても、
物価の上昇とともに費用は上がり続けるため、利益は少しずつ目減りしていくこととなります。
また、競合他社の成長やIT・AI等の技術革新に伴い、自社の既存サービスそのものの価値が下降する可能性も考えられます。
コンフォートゾーンに留まり成長を拒絶することは、衰退を選択すると同義。
とイシヅカは考えております。
◇ イシヅカ自身の成長に伴う精神局面

成長過程での精神局面の概念を理解したところで、
ここでは少しイシヅカ自身のお話をしたいと思います。
22歳で国税局に入庁し、33歳で税理士として独立したこれまでの私の人生を振り返り、
イシヅカがそれぞれの環境で経験した成長局面での精神状態について、国税局時代から遡ってお話ししていきます。
● 国税局時代に感じたパニック〜コンフォートゾーン
国税局の職員は、基本的には税務調査を行う形となるため、
調査に不慣れな1~2年目の新人時代は、まさにパニックゾーンにいる状態となります。
20代前半の若造が、自分より2回りも3回りも年上の社長や税理士が待ち構える会社へ単身で乗り込み、間違いを指摘する。。
採用試験や研修で知識を積んでいるとはいえ、初めから上手くいくわけがありません。
必死で見つけた指摘事項もボコボコに返り討ちにされ、職場に戻ってからも上司から調査不足を指摘され詰められる毎日、、
新人調査官の精神状態はまさに、パニックの毎日です。
しかしながら、そんな中でもなんとか食らい付いて頑張っていると、
知識や経験、調査のコツを掴み、コンスタントに修正事項を見つけられるようになります。
国税の職場は実力主義ですので、
調査である程度の成績を出せるようになれば、自身のペースで仕事がコントロールできるようになり、職場での居心地は非常に良くなります。
国税時代を振り返ると、調査に慣れてきたタイミングがまさしくコンフォートゾーンで、
「出世を目指してラーニングゾーンへ行くか、このまま定年までコンフォートゾーンに留まり続けるか?」
を選択する局面となります。
結果、「税理士として独立する」という、パニックゾーンへの道をイシヅカはなぜか選んでしまった訳です。。
● 税理士独立後に直面した強烈なパニックゾーン
国税局という守られた空間から飛び出し、ゼロの状態から独立開業した33歳のイシヅカですが、
開業から1年間は、新人調査官時代とは比較にならないほどのパニックゾーンを経験しました。
出勤時間も上司も存在しないため、完全なる自由ではあるものの、、
顧客も売上も0のため、時間の経過と共に貯金残高が減っていくだけの日々。。
「この環境を脱却するために努力をしたいが、そもそも何をすればいいのかすら分からない。」
という、まさに孤立無援状態でした。
集客方法が一切分からなかった当時のイシヅカは、
異業種交流会や経営者が集まる飲み会に参加しまくって名刺を配りまくったり、TikTokで税金に関するショート動画を上げまくる というガムシャラどぶ板営業を繰り返しておりました。
「正解かどうかは分からないが、とにかく走り続けるしかない…。」
霧の中を全力疾走していた当時は、紛うことなきパニックゾーン真っ只中。
今振り返ると、当時は常にストレスに支配されていた精神状態だったと思います。
● 開業2~3年目で感じたラーニングゾーン
1年目でなんとか顧問先を増やし、廃業の危機を脱することに成功。
今度は「スタッフを増やす」「事務所を拡張する」「安定した集客手段を持つ」
といった課題が見えてきます。
良い人材を増やし事業を拡大するためには、環境作りや、安定収益の確保など、経営者としての目線がより必要となってきます。
将来の発展を想像しながら新しいことにチャレンジし続けていたため、
廃業の恐怖に追われていた初年度に比べ、充実感ややり甲斐を感じることができ、
まさに「ほどよいストレス」がかかったラーニング状態でした。
まだまだ成功とはいえない規模でしたが、
日々、事業や自分自身が成長していることが感じられ、一番イキイキとしていた時期だったと思います。
● 開業4年目で感じるコンフォートゾーン
開業から4年が経過すると、スタッフは8人に増え、それに耐えうる事務所や設備も一通り揃い、集客手段も確立されていきます。
国税時代に調査のコツを掴んだ時と同じく、税理士事務所経営のコツを掴んだ感触があり、将来への不安はだいぶ減ってきた印象です。
その分、ラーニングゾーン時に感じていた新鮮な気持ちやワクワク感は薄れ、
「安定して収益を確保できているが、このままでいいのだろうか?」
という、漠然とした不安を常に抱える状態となります。
実は、この状態は現在進行中でして、
「ラーニングゾーンへ移行するために何か仕掛けなければ」
と、次の事業計画を練っている状況でございます。
(計画を練っている時点で、コンフォートしちゃっているような気もしますが、、、、)
◇ 経営者のコンフォートゾーン脱却の方法

イシヅカの体験談を振り返ったところで、こちらの章ではコンフォートゾーンの脱却方法について、
コンフォートゾーンを上手に脱却した経営者を数多く見てきたイシヅカが思う2つのアプローチを語りたいと思います。
● コンフォートゾーンは堅実経営をする経営者こその悩み
そもそも、経営者という人種はリスク許容度が恐ろしく高い人が多く、
ラーニングゾーンに行き着く前に追加投資を繰り返し、常にパニックゾーンに身を置き続けている。
という人の方がむしろ多いのが現実かと思います。
(そういった方にとっては、コンフォートゾーンなどという概念自体が無縁でしょう…)
以下の事項は、堅実経営を行い成功しているが故に、コンフォートゾーンに留まっている自身に悩みを持つ経営者向けにお話しできればと思います。
● コンフォートゾーン脱却アプローチ その1:事業拡大
コンフォートゾーン脱却の1つ目の方法は、既存事業の拡大となります。
具体的には、人員増加、設備投資などで生産数を増やし、売上の上昇による事業規模の拡大を目指す訳です。
既存の事業規模を拡大する際には、様々なトラブルが発生することが予測され、
「人を増やしたいが求人が弱くて集まらない」
「人が増えたことで事務所が手狭になった」
「設備投資をするための資金がない」
など、、
コンフォートゾーンにいれば経験しなかったであろう気苦労やリスクが数多く降りかかってきます。
しかし、これを1つ1つ解消していくことで事業拡大が実現でき、
その状態こそがまさにラーニングゾーンにいて成長段階にいる状態。となります。
● コンフォートゾーン脱却アプローチ その2:新規事業への参入
事業拡大が事業を縦へ成長させるアプローチとすると、
新規事業への参入は横へ展開するアプローチとなります。
よく、開業した税理士向けに税理士事務所経営のノウハウを売っている税理士をSNSで見かけますが、
あれこそがまさに、自身の事業を横に展開しているケースかと思います。
新規事業への横展開のポイントは、
既存事業と類似する業種を選択することで、これまでに培ったノウハウや人脈を活用しつつ、新たなパイを取りに行くこととなります。
「既存事業と類似する業種」というのが非常に大切で、全く新しい業種へ参入すると、またパニックゾーンからのスタートとなり、過度なストレスから既存事業に悪影響を及ぼすリスクがあるため、注意が必要です。
重ねてとなりますが、新規事業への参入はあくまで横展開が前提で、
全く畑違いの業種に手を出すと、大きく赤字を出して既存事業の足を引っ張るリスクがあることは必ず認識しておくべきです。
新規事業への参入によって、せっかく安定していた既存事業をパニックゾーンまで逆戻りさせてしまっては本末転倒と言わざる得ず、
このパターンで失敗している経営者は意外と多く存在しております。
◇ まとめ
本日は、「現状維持の危険性~コンフォートゾーンからの脱却~」について、というテーマでお話しさせていただきました。
中々に抽象的な話でしたが、共感いただける方がいましたら幸いです。
それでは、今日はこの辺で。
終わり