両家顔合わせ食事会は手作りしないほうがいい | エッセイ
両家顔合わせ食事会。
そう、それは結婚前に両家が一堂に会して挨拶をし、婚約を確認し合う食事会。初対面の家族が出会い、ぎこちなく会話を交わして親睦を深める。
一般的には1人あたり1万円ほど。よいお店の個室をとり、服装は全員フォーマルで、上座下座があり、切って食べる手土産は避ける。和食なら料亭、多いのはフレンチのフルコース。下見のために一度訪れて、プログラムをつくって、費用は自分たちで……。
うわあああああああああ!
無理だ!!!
転職したばかり、同棲したばかりでお金があまりなく…。そもそも、東京の顔合わせに選ぶようなお店って、個室料飲み物代含めて1人あたり1万円で抑えるなんて無理。無理じゃなくても、中途半端なお店になってしまう。
フレンチのフルコースなんてほとんど食べたことなく、料亭も行ったことがなく。自分たちが気を回す場で、なにもかもぎこちなく緊張して過ごす場は嫌すぎる…。
もっとちゃんと、自分たちの手でおもてなしをしたい。自分たちのことを知って欲しいし、和やかな場を親には楽しんでほしい。願わくば、両家がこれをきっかけに仲良くなって欲しい!
そんなわけで、両家顔合わせ食事会を、私たちは手作りしました。会場を借り、食事を作り、もてなして、片付けをしました。
とてつもなく、大変、でした。絶対に、誰にも勧めません。
これは2年以上前のことなのですが、あの大変さは今でも鮮明に思い出せます。せっかくそんな(いろんな意味で)思い出深かった両家顔合わせ食事会、記録としてここに残しておこうかな、と思い出しながら書いています。
誰も真似しないでね…。しないか…。
会場「le flou.(ル・フルゥ)」
双方の家の中間地点が東京なので、最初から東京で行うことは決めていました。
いくつか確認して検討した結果、決めたのは代々木公園駅から徒歩2分のレンタルキッチン「le flou.(ル・フルゥ)」。
アイルランドキッチンを併設した空間。大きなテーブルと壁一面の窓から差し込む光。最大14人を収容可能で、スタジオとしても使われているそう。
食器もグラスも多種多様で、和食でも洋食でも大丈夫そう。静かな住宅街の中にあり、ゆっくりできそうというのが一番の決め手でした。
オーブンも食洗機もあり、困ることのない完璧な設備。
やり取りもスムーズで下見もOK、この会場と管理人さんには本当に本当にお世話になりました。
テーブルコーディネート
コーディネートというほどではないのですが、会場の食器やグラス、ナプキンや花でテーブルを飾ってみました。
婚約指輪と結婚指輪、現像した前撮りの写真なども飾りました。綺麗だと思って選んだ百合は、香りが強すぎて食事の席には向かなかった…。反省。
メニューは夫が手書きで作成してくれました。実はこちら白封筒で、中には手紙が入っています。帰ってから読んでもらいました。
写真からは見えにくいのですが、カトラリーレストも手作り。細長い小瓶にドライフラワーを詰めたもの。会が終わってからお土産としてお渡ししました。
Drink 〜泡、白、赤ワイン〜
ワインは、ソムリエの知人にセレクトしていただきました。
スパークリングワイン
まず、ボトルの形が可愛い&格好いい!
オレンジと黒のコントラストは、セットの箱も素敵。説明通り、飲みやすく華やかなスパークリングワインでした。
白ワイン
母がオーガニックワイン好きなので選択。しっかりとした口当たりで、食中酒にぴったりでした。正直、今まで飲んだ白ワインの中でもかなり好き…!
赤ワイン
どっしりと重く、でも料理の邪魔はしない美味しすぎる赤ワイン…。飲んだ全員が「美味しい!」しか言えなくなりました。こんなに高いクオリティでこのお値段、何本でも家に置いておきたくなる…!
3本とも素晴らしいワインで、プロに頼んで本当によかった…という気持ちでいっぱい。料理が微妙でも、ワインが素晴らしいなら挽回できる、はず。
ワインのセレクトをしてくれた知人は、いまはワインの卸売業をやっていまして。
ドイツに住みながら、ドイツ、イタリア、フランスのワインを中心に日本への輸入を行っています。製造地や製造方法にこだわっているので、気になる方はぜひ。間違いのないセレクトです!
Menu 〜お互いの地元食材を使ったイタリアン〜
メニューはこちら。
ありとあらゆるきのこを、玉ねぎとともに炒めてミキサーで攪拌し、温めた牛乳と生クリームを合わせます。きのこは入れれば入れるほど美味しい。
シャインマスカットとブッラータチーズを切って合わせ、砕いたクルミをかけています。岩塩と胡椒をふり、仕上げにオリーブオイルを。
スプーンにはトリュフオイルを数滴垂らしており、口に運ぶときにふんわりと香りが広がるようになっています。表参道の「ラス(L’AS)」の前菜で素敵だなと思ったので、真似してみました。
こちら、私の地元である信州から取り寄せた馬肉の塊を叩き、セルクル型で丸く抜いてウズラの卵を乗せます。細かく刻んだにんにくと塩抜きしたケッパー、Maldonの塩、レモンとピクルスを添えました。
食事のときに皿の上で調味料と肉を混ぜて食べます。本場では店員さんが目の前で混ぜてくれますが、せっかくなので個々人が好きな味付けにできるようにしてみました。東京で食べるなら、馬肉のタルタルは「ブラッスリー・ヴィロン 丸の内店」が最高です。
手打ちパスタにまだ慣れていないときに作ったので、結構固め&幅広めになってしまった…。セモリナ粉を使って時間をかけて打った麺なので味は美味しかった。生ハムはもう少し薄めのプロシュートを選んだほうがよかったかも。。
赤ワインにぴったりのローストビーフ。こちらは食材と調味料を必要分送ってくれるオンライン料理教室である「シェフレピ」のキットでつくりました。
前日までにつくり、冷製のものをサーブ。牛リブロースの肉感と花椒を使ったスパイシーで甘酸っぱいベリーのソースがぴったりでした。
最後はデザート、私の得意なカッサータというアイスケーキ。クリームチーズを練り上げて作ったこのアイスには、紅茶を吸ったレーズンやフルーツ、食感の楽しいホワイトチョコレートがたっぷり!
夫の地元である栃木産のとちおとめを添えました。
感想
いやあ、ねえ……。
これは、無理ですよ。ぜんぶ準備して、料理は下ごしらえすべて家でやって運んで、会場の慣れないキッチンで仕上げをして。ワインも3本持って歩いて。時間に制限があるので、その中で洗い物まですべて済ませなければいけない。この頃はよく喧嘩をしながら、休日に試作や買い出しをしていました。
そうそう、この食事会で婚姻届にサインをした(双方の親が証人)のでその時間も必要だったし、幼少期から前撮りまでの映像も流しました。この作成もとても時間がかかった…。
たぶんレストランでやるよりも安く済んだけれど、とにかく手間と時間が無限に必要で、クオリティについても反省点が多く、「だからみんなレストランでやるんだ!?」という当たり前の気づきをしましたとさ。
作りながら食べながら飲みながら喋りながら空いたグラスにワインを注ぎながら…もうマルチタスクの集合体。ドタバタと慌ただしく駆け回る私たちを、両家とも爆笑して見守ってくれていました。
自由に話ができるリラックスした空間を作れたのかなとも思うようにしています。知らない間に母親同士が電話してる仲になっているし…。
後日、半狂乱でパスタを茹でる私たちの動画が親から送られてきて、完全に参観日か運動会のようなノリだったのだなと納得しましたが。
とにかく。
両家顔合わせ食事会を、手作りでしないほうがいいです。
時間もかかるし手間もかかる、下調べや試作が必要だし、うまくいかないとイライラして結婚前なのに喧嘩になるし。お店はプロの接客とプロの料理で大切な日を彩ってくれるはず。大人しくゼクシィの言うとおりにしましょう。
さて、この顔合わせ会の約半年後、私たちはなんと結婚式前日の深夜に半泣きで作業をしていました。
なぜでしょうね。
あんなに大変だったのに、まさか、ね……?