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壮大なる伏線回収

1990年代半ばから日本経済は『失われた30年』に突入し、いま現役で働いている人のほとんどが就職氷河期と呼ばれる時期に社会に出ているという世の中です。

わたしもそのひとり。芸術系学部を卒業したけれど、希望していた音楽業界の門戸は狭く、針の穴どころか、ほぼ閉じていていたあの頃。まったく違う業種で食いつなぎ、今日までやってきました。

とはいえ、ただ希望が叶わなかったことに対して嘆くというよりは、その間にも持ち前の好奇心で様々なものに興味を持ち、そして食いつなぐためにもいくつかの資格を取りました。そのうちのひとつが『一般旅行業務取扱主任者(現・総合旅行業務取扱管理者)』です。

小さいころから『どこかに行く』ということが大好きで、ひとりで幼稚園からこっそり道草を食いながら帰ったあの頃。今ほど物騒ではなかったあの頃は、そんな余裕と隙が日常生活にありました。

そして、わたしは極度の人見知りだったこともあり、たくさんの本を読んだのですが、お気に入りは『世界の民話』でした。日本以外のたくさんの国。風習も容貌も、肌の色も違うたくさんの人たち。その国を訪ねることが、子供のころの夢でした。

そして今。急激な少子化と労働人口不足によって、女性でも新卒じゃなくても、それなりに職に就ける時代が来ました。そこでわたしが最近得た職は、なんと『音楽関係の出版社の中にある旅行業務』。なんだかハイブリット感がすごいのです。

もともと音楽と旅は親和性の高いものです。ミュージシャンはツアーに出ますし、旅や新たに踏み入れた土地からから刺激を受けて良い曲が作られたりします。わたしはドヴォルザークの『新世界より』が大好きですが、それはまさに見知らぬ土地に踏み入れた時のワクワクと不安とが、わたしの経てきた時間に重なるからです。

そしてさらに、そのハイブリッドな業務に新たな業務が加わりました。それは写真撮影。本日も来日しているあるアーティストの写真を撮りに行ってきました。写真も音楽と親和性が高く、インスタのストーリーズにも音楽がついていて、よりその写真をイマーシブにしてくれます。

それにしても…
まさかあの就職氷河期に『(うちではない他社さんで)貴殿のご活躍をお祈りいたします』というメッセージをもらい過ぎて落ち込むこともなくなるくらいだったわたし、『仕事ってどこに転がってますか』という気持ちになっていたわたしを考えると、とっても不思議な気持ちになります。

若いころの夢がストレートに叶わず、回り道の間に様々な武器を手に入れてきたわたしだからこその、今のこの状態。壮大な伏線回収。

きっとたくさんの方が同じように、思う通りにならなかったけれど、その行く先々でいろいろな経験を積んでいたら、斜めからその道に踏み入れていたという経験をしているはずです。『これだけが夢を叶える唯一の道』という固定概念を手放せば、思ってもみなかった方向から手が差し伸べられることに気が付くのだと思います。




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