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2021/2/3 とっておきアフタヌーンvol.15

1週間に2回もコンサートがある、夢のような角野隼斗さんweek! 2/6の桐生でのコンサートで上書きされてしまわないうちに、私としては珍しく急いでNoteを書きます。

2021/2/3、立春の暦どおりの暖かい日。2か月ぶりのサントリーホールでの、日本フィルハーモニー管弦楽団との共演でした。角野隼斗さんが音楽家をめざすきっかけとなった、2018年のPTNA特級グランプリを勝ち得たのが、まさにこのサントリーホールで日本フィルさんとの演奏だったこともあり…、なんというのか、彼は自分の記録を塗り替え更新し続ける人生なんだろうな、きっと。

この日の演目は

スメタナ:連作交響詩『我が祖国』より「モルダウ」
ガーシュウィン:『ラプソディー・イン・ブルー』
角野隼斗:『ティンカーランド』(とっておき アフタヌーン特別版)
ムソルグスキー(ラヴェル 編曲):組曲『展覧会の絵』

という、非常にクラシック初心者にもやさしい、わかりやすくキャッチ―な曲ばかり。日本フィルさん、私は詳しくは存じ上げなかったのですが、ストリングスセクションの一体感が素晴らしく、流れるような、とても丁寧な演奏をする管弦楽団だなと、1曲目の「モルダウ」で感じました。

「モルダウ」の時は、ステージ左奥にひっそりと隠れていたピアノが、曲間に運ばれてきます。階段状にせりあがっているステージの一部が自動で平らになり、ピアノが通り過ぎるとまたすぐ階段状に。その上がり下がりが非常にスムーズで、スタッフさんたちの無駄のない動きに感心してしまいました。生のオーケストラって人数が多いぶん、こういう配置換えが見られたりするのが面白い。あと何より大好物なのはチューニング! あれを聴くと、うわ~!これから始まるんだ!と気分が高揚します。

そして「ラプソディー・イン・ブルー」。12/13は、角野隼斗さんのソロリサイタルだったので、そこまで感じなかったのですが、オケの中にいる彼の姿は、本当に細くて小さかった。席が1階のほぼ最後列だったということもあり、一瞬見失うことさえあるほどの、存在感のなさでした。女性のソリストなら、華やかなドレスが引き立てるのでしょうけれど、みんなと同じモノトーンで、おとなしくこじんまりと座っている。

それが、いったん弾きだすと! ぶわわわわ~~~っと巨大化して、サントリーホールを埋め尽くしてしまう…! 観客もオケも、みんな呑み込まれてしまう…。50人くらいの編成のオケが奏でるフォルテにも、まったくひけを取らない迫力。そして次第に跳ねだす左足。

↑ このインタビューで話があった通り、赤いピアニカが出てくればもうそこは、かてぃんワールド! オケの方たち、よく微動だにせず座っていられるな~、私には無理だな、少なくとも上半身は揺らさずにいられない(笑)小曽根さんの響きもあちこちに感じられて、ラボ配信での小曽根さん研究のあとも、さらに研究したのかな? 小曽根ismを継承していくという意思を感じるカデンツァでした。

↑ このときは18分だった演奏が、当日は25分。ご本人も「暴走してしまって」と言っていたけれど、ふだんのCateen's Liveが1時間半でもあっという間、を味わっている身としては、7分の違いはほぼ誤差でした(ごめんなさい笑)。ハンガリー狂詩曲が出てきたときは、そうそうコレコレ、てな感じで。

「ラプソディー・イン・ブルー」が終わった後の、司会の高橋克典さんのコメントが、とても興味深かったです。「いろんなタッチができるんですね」と高橋さんも舌を巻いた様子で、角野さんの奏でる多彩な音を、俳優として役作りをする自分の経験と絡めて理解されたようでしたが…。

そうかもしれない、と納得しました。つまり、役者は台本をもらって役を演じるにあたって、たとえば同じような役であったとしても、台本には書いていないキャラクター背景を綿密に埋める作業をしていく。性格や出身などはもちろんのこと、ストーリーに関係のないようなたわいもない、たとえば好きな食べ物は何かとか、靴は左右どちらから履くか、などのことまで(もちろん個人差はあるでしょうけれど)、たくましく想像して、その役者なりの役像を描き出して、台本にびっしりと書き込む人もいると聞いたことがあります。それを元に、役を生きるのが俳優。

角野さんの奏でるピアノは、他のピアニストと異なり、とにかく情報量が多い。聞こえるのは音、だけのはずなのに、「ナウシカレクイエム」を弾けば、砂を含んだ風が頬に当たって痛いぐらいだし、胞子は飛んでるし、「水の戯れ」を弾けば、キラキラした水滴が見えるだけでなくおだやかな湿気が鼻をくすぐるし、遠くで遊ぶ子どもの声も聞こえるし。イメージを伝える表現力が段違いで、ピアノの音、を越えてあまりに饒舌で、ほとんどテレパシーを使ってるのではないかと思うほど(私が感じるだけでなくて、コメントでたくさんの人が同じようなことを書いていますよね)。ラボ内限定配信で「子犬のワルツ」のプロトタイプを公開してくださっていますが、たしかにプロトタイプは、普通に美しいピアノなんです。普通のピアニストが弾く、楽しいピアノの音。逆に普通のピアノの音も出せるんだと驚いたくらいです。もしかしたらその時はまだ、子犬が食べているフードの種類を知らなかったのかもしれません(笑)公開されているほうの「子犬のワルツ」は、子犬が駆け回る、芝生の匂いまでしてくるけどね〜。。

役者が台本の行間を埋めて、役を生きるように、角野さんの多彩な音は、譜面はもちろん「音」というチャンネルの幅すら通り抜けて、その曲のシーンに合わせて自由に時間と空間を行き来する。そして「音で生きる」ことができるのが、角野隼斗さんというピアニスト。
「ラプソディー・イン・ブルー」、角野さんを代表する曲のひとつとして、一生奏でつづけて欲しい、その進化を見続けたいと思う。

続いて赤い布がかけられた台に載せられたトイピアノちゃんが、うやうやしく登場。「とっておきアフタヌーン特別版 ティンカーランド」。

この高速曲がいったいどんなふうにオーケストレーションされるのか、ちょっと心配だったのですが、まったく無用でした! 吹奏楽曲のようにリズミカルにサントリーホールを駆け回る。中間部の、パリのカフェを思い起こすようなメロディーラインを、コンサートマスターさんがヴァイオリンで歌い上げるのも、ピチカートが印象的に鳴るのも、良かったなあ。

なにより角野隼斗オリジナル曲が、星出尚志さんの手でオーケストレーションされて、この大編成の日本フィルオケメンバーに演奏してもらって、サントリーホールに響いてるって……、感無量すぎます。。

実はこのコンサート、私はひそかな戦いをしておりました。なんと夫と2人で行ったのです。

この夫、クラシック好きの吹奏楽経験者。学生時代からの付き合いなので、私のクラシックは、音楽の時間で習ったもの以外はほぼ彼に教えてもらったようなものです。そして彼はジャズも聞くのですが、特に上原ひろみさんが大好き。それにもかかわらず、妻が熱をあげる「角野隼斗はぜってー聴かねー!!」スタンス。私も負けていられないので「ぜってー角野隼斗を認めさせたる!」という計画のなかに、このコンサートがございました(笑)

そこでお正月の帰省のとき、ふだん車の中ではひたすら吹奏楽が流れているのですが、今回は行き帰り3時間でひたすら”HAYATOSM”をかけました。家にたどり着くころには、夫は英雄ポロネーズを鼻歌で歌ったり、うっかり「粒立ちがちがう…」と角野隼斗さんのピアノをホメちゃったりしていたので、ひそかに私はガッツポーズをしておりました。そして満を持して「実はサントリーホールのチケットが余ってるんだけど、ラプソディー・イン・ブルーなんだけど」。

あまのじゃくなので、一度で「じゃあ行こうか」なんて言うはずもなく、「興味ないから売っていいよ」とまで言っておりましたが、そこは長年の腹の探り合い。案の定、しばらく放っておいたら「午後半休取ったから」と言い出した。イエーイ、勝った(笑)

その夫が隣に座っていたもので、私は理性を保つのに必死でした(笑)しかもですよ、その直前にあの「情熱大陸」のYOUTUBEへのUPで、壊れていたもので……(角野隼斗が大人の色気まで身につけたら、最強すぎて誰も手がつけられん)

夫にとっては、もちろん原曲もなんども聴いたことのあるティンカーランド。「オケバージョン、いいなあ!」とご満悦でした!! でしょうとも、でしょうとも(笑)

(編曲してくださった星出尚志さんは、吹奏楽団の委嘱作品を数多く提供するなど、吹奏楽と深い関わりのある作編曲家さんなんですね! それも夫攻略にはかなりのヒットポイントでした。ありがたや〜)

家に帰ってきたら、なんとカレンダーが到着してました!! 初めて見たCateen's Liveで「直視できない」とおっしゃってたカレンダー、心を掴まれてからほんの1週間ほどだったので、まさかこんなに沼が深いとは思わず、注文せずグッと我慢したカレンダー、でも「やっぱり欲しい」と思った、もうすでに残り3か月しかなかったカレンダー、12/8に注文してからかれこれ2か月待ちわびていたカレンダー。。あの可愛い隼斗くんが、リアルコンサート帰りに「おかえり」と待っていてくれました…。なんというタイミングでしょうか…!!

いやぁ、カレンダーの角野さんは、2021年の角野さんと比べると、ほとんど「あどけない」といってもよいくらい、別人!! ご両親に大切に守られている感がします…。いまや独立し、ひとりの音楽家として、長い音楽史に新しいページを書き足すのだという気迫(と色気)まで感じさせてくれますもん。 いわば角野隼斗第2形態を見せていただいていますが…、少なくとも第5形態くらいまで行きそうですから、本当に目が離せません。

この日は、夜にラボ配信という名の打ち上げもあって、そこに小曽根さんまでいらっしゃるというミラクルが続く一日でした。

旧暦では新年の始まりでもある立春、やはり2021年は角野隼斗さん飛躍の年!!!! を象徴する素晴らしい一日でした。

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