駄文 #9

 ”ありがとう”

 なんて素敵な響き


迷惑をかけたのに許してくれてありがとう、仕事を手伝ってくれてありがとう、今日も元気でいてくれてありがとう、出会ってくれてありがとう、生まれてきてくれてありがとう、っていうか、ありがとう


 ああ、例えば猛烈にありがたい人がいたとして、私はあと何回その人にありがとうと伝えられるのだろうか

 その人に対するありとあらゆる言語表現をありがとうへと着地させても尚、言い足りないかもしれない

ごめんねの代わりにありがとう、おはようの代わりにありがとう、てめえ殺してやるの代わりにありがとう

 そんなことをしているうちに、ありがとうという言葉に込められたありがとうという意味は力を失っていくだろう


ありがとうは私の心から他方へと変換される術をなくし、永遠に我が精神世界をコダマすることとなる


こんなに寂しい事はないよおとうちゃん


 そんなことを考え、振りまいているうちに本日の労働が滞りなく終了した


散々悩んだ挙句、辛いラーメンで腹を膨らますこととし、久々に味わうその辛さを十分に苦しみつつ堪能した

 

家に着いてBGM代わりに外国語のニュースを垂れ流しながら、昨日買った他人の駄文集を寝転がって読んでいるうちにすっかりおねむになってしまって、少し貪ったと思う


私にはやりたいことが多すぎる、その大抵が耳を使うものか目を使うものである

こんなにもやる気に満ち溢れているのにいっぺんにやることが出来ないのがここ数年最大の悩みだと言っていい


こうなると、もう寝るしかない

全自動で寝る

全てを極めることが出来ないなら、全てやらない、というわけではない


夢の力を利用するのだ

夢の中であれば私は8本の腕と108の眼で持ってありとあらゆることを同時にこなすのだ

身体の中央より少し上の、ミゾオチを隠すように縦に並んだ特に大きい8つの眼で見たものは決して忘れることがない


そのさらに少し上に横並びで付いている小さい眼は可視光以外の光を見逃さない

常に開けていると、電波の檻の中に囲われている気分になるので、必要な時以外は閉じている


全ての穴は耳と鼻を兼ねている、どんな動物よりも早く大地震を察知し高台に避難するし、マライアキャリーの豊かな歌声を騒音と言い切る



そしてお腰にはありがとう印の吉備団子を欠かさない



お供を連れて鬼退治に向かう半ば、鏡に映る自分の姿が鬼以上に恐ろしく、絶望し死場所を探す



その道中で川を見かける度に、流れの速さ、深さ、人目につきやすさをそれぞれ3段階評価し、死にやすい川のレビューとしてブログに上げていくうちに一部死にたがりや層のニーズに直撃



一躍時の人となるが、それは全て夢だったそうな










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