
1級建築施工管理技士の問題解説〜工期と工事費の関係
はじめに
1級建築施工管理技士の資格勉強をしている時に、工期と建設費関する問題が出てきます。
何事にも置いても、時間とお金は重要な要素や考え方の基準になったりします。
建設工事においては「なるべく請負った金額より安く、工期よりに早く完成させる」ことは、ほぼ全ての建設業の目標です。
ゆえに施工系の資格試験の問題で工期と建設費に関する問題が出題されます。
具体的に1級建築施工管理技士の過去の問題から「工期と建設費」に関する基本事項をまとめていきます。
過去問から学ぶ「工期と建設費」の関係
問題
建築工事における工期と費用に関する一般的な記述として,最も不適当なものはどれか。
1. 総工事費は,工期に比例して増加する。
2. 間接費は,工期の長短に相関して増減する。
3. 直接費と間接費の和が最小となるときが,最適な工期となる。
4. ノーマルタイム(標準時間)とは,直接費が最小となるときに要する工期をいう。
5. クラッシュタイム(特急時間)とは,どんなに直接費を投入しても,ある限度以上には短縮できない工期をいう。
この問題の答えは解説をしてから、最後に載せます
解説
この問題は下の工期-建設費曲線が描けて、曲線の意味を理解していれば簡単に解けます。
図1に工期-建設費曲線のグラフを示します。
縦軸に費用(建設費、工事費、工費とも呼ぶ)を取り、横軸に工事期間(時間や工期とも呼ぶ)を取ります。
注意
横軸に関しては施工する速さとして施工速度を取っている書籍や資料があります。
同じ工事で施工速度が早ければ工期が短くなり、遅ければ長くなります。
時間的な意味で考えれば、工事期間と施行速度は同じことを言っているのことになります。ここを勘違いするとややこしくなるので自分の見ている書籍や資料を確認してください。

図1 工期ー建設費曲線
最初に①から③の費用について確認します。
①直接費(直接工事費ともいう)は建設工事に直接関連する費用のことで材料費や労務費などを指します。
②間接費と(間接工事費ともいう)は工事全体の管理・維持にかかる費用で足場や看板、事務所などの仮設物の設置、維持、撤去費に加えて職人ではない現場監督の給料などを指します。
③総工事費用(総工事費もしくは工事費ともいう)は①と②の費用を足し合わせた費用のことを言います。
一般的に工事期間が長くなると直接費は減少、間接費は増加します。そのため工事期間が長くするか短くするかで、総工事費用は単に比例による増加や減少ではなく、曲線を描くように変動します。
補足①今回扱う工期-建設費曲線の工事モデル
間接費は事務所等の維持費や管理費等で一般的に工期の短縮に伴って減少し、直接費は工期が長期化すれば減少するとは限りません。
直接費は工期短縮より型枠等の同一資材転用による回数減少や施工速度が速まることによる材料手配が間に合わず割高な別資材を使用するなど様々な要因で増加します。
また間接費は地震や台風による被害による人や物に対するお金(保険・修理・点検など)によって変わってきます。
ここで扱う工期-建設費曲線は、特殊な要因を排除した一般的な工事をモデルとして扱っていきます。
さらに詳しい工事費の内訳を図2に示します。赤文字の部分が問題に関係する費用になります。
直接工事費(直接費)と間接工事費(共通費)を合わせると全体の工事費になります。

図2 総工事費用(総工事費もしくは工事費)の構成
図1の工期ー建設費曲線の詳細な部分を示した図が図3になります。

図3 工期ー建設費曲線の詳細
以下、グラフの各点の費用と工期について説明します。各点の費用と工期に関する用語は理解して覚えておくとよいです。
A点:工事を最も経済合理的(最小コスト)な早さで施工する時の直接費
工事を最も経済合理的(最小コスト)な早さで施工する時の直接費の費用と工期(施工時間)は以下の通りです。
A点での費用CA:ノーマルコスト(標準費用)
A点での工期TA:ノーマルタイム(標準時間)
B点:工期を可能な限り短縮する突貫工事における直接費
工期を可能な限り短縮する突貫工事における直接費の費用と工期(施工時間)は以下の通りです。
B点での費用CB:クラッシュコスト(突貫費用or特急費用)
B点での工期TB:クラッシュタイム(突貫時間or特急時間)
C点:工期を最大限短縮するために必要な最大費用
C点での費用AC:オールクラッシュコスト(オール・クラッシュ・コスト)
この時の工期はTBのクラッシュタイムが最短の工期になります。
補足
オールクラッシュコストとはクラッシュコスト(突貫工事にかかる追加コスト)の最大値 であり、最も短い工期(クラッシュタイム)を達成するために発生する総工事費を意味します。
具体的な要素直接費の急増(労務費、材料費、特急で資材調達費など)
間接費の変化(管理費、共通仮設費の削減 or 増加)
施工体制の強化(追加人員・機械の投入による効率向上)
この概念は、工期とコストのバランスを考慮する工事管理において重要です。
D点:総工事費用を抑えつつ、工期の短縮をする点(最適計画)
D点での工期TD:最適工期
グラフには表示してませんがD点での費用は直接費と間接費を合わせた総工事費用が最小になる時間と費用にの面から見て最も合理的な工期と費用を表します。
しかし直接費と間接費に関しては補足1で説明した通り、金額が最も良いとは限らないため、今回は費用よりも工期に着目しました。
補足②様々な工期-建設費曲線の工事モデル
今回は1級建築施工管理技士の試験で問われる工期-建設費曲線を見てきました。建築分野では図1のような曲線の例がよく出てきます。しかし土木などの他の建設分野では若干変わった変わった曲線で例を示すことがあります。
多少、曲線の形が変わっても、今回解説した内容は変わりませんので、驚かないようにしましょう。
図4に他の分野で例として描かれている工期-建設費曲線を示します。

図4 他の分野で例として出る工期-建設費曲線の例
解答
解答は1になります。
解説を読んでもらえれば、総工事費用は比例的に増加(直線的な増加)をするのではなく、曲線的な増加をします。
補足③総工事費の内訳について

図2 総工事費用(総工事費もしくは工事費)の構成
図2の各費用について詳しくは触れないので、詳しく知りたい方はANDPADさんのホームページを参照してもらえれば幸いです。
また公共工事になりますが、積算で使う詳しい数値などを国土交通省のホームページにありますので、そちらも興味ある方は参照してください。
あとがき
今回は1級建築施工管理技士の試験問題の解説を書きました。
問題をしっかり解説して読んでいる人にも理解してもらうには、どのような内容や表現で書いた方がいいか悩みどころでした。
普通の参考書などは1~2ページほどで図や表を使い、簡潔に書いているので流石参考書の文章だと感心しました。
私の文章や表現はまだまだ改善や修正が必要な部分があると思うので、誤字脱字や分からない箇所があれば、コメントで教えてもらえれば幸いです。
また今回の記事を書く前にオールクラッシュコストについて自分も勘違いしていた部分がありました。
勘違いしていたこと
総工事費は直接費と間接費を足し合わせた費用になります。
私はオールクラッシュコストは、計画していた総工事費用を超えたイレギュラーな費用の状態のことだと思っていました。
イレギュラーとは施工速度を全工程で速めたり、施工不良などのトラブル発生して予想の総工事費を図1などの総工事費用の曲線上の上の領域に行ってしまいことだと勘違いしていました。
これは図5のC 点を見ると分かります。
オールクラッシュコストは工期を最大限短縮するために全工程に人員と資材を投入することになります。
おそらくクラッシュコストが直接費のみに対して使う言葉だと確認せず、『全工程に人員と資材の投入』という意味が合わさって勘違いしてしまいました。

図5 誤ったオールクラッシュコスト
時間や余裕がない中で参考文献を調べたり、内容の確認作業は難しいことですが今の時代に必要なことだと思います。
自分の気になることや好きなことでもいいので、しっかり確認してみると良いですね。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。