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著作権法改正で漫画の違法ダウンロードが刑事罰化|改正のポイントを解説

2020年6月5日、違法ダウンロード規制を強化する内容の改正著作権法が成立しました。
違法ダウンロードに関する改正内容は、2021年1月1日から施行される予定です。

今回の著作権法改正は、近年インターネット上で氾濫している海賊版への対策を打つことが主な目的となっています。
特に漫画の違法ダウンロードについては、実際に相次いで問題となっていたところ、今回の著作権法改正によって違法・刑事罰の対象とされました。

インターネットユーザーの方が、ご自身で違法ダウンロードに手を染めないようにすることが大切なのは当然のことです。
一方、コンテンツ・ビジネスを営む事業主の方も、自社のサービスが違法ダウンロードに加担していないかを改めてチェックする必要があるでしょう。

この記事では、2021年1月1日から施行予定の新たな著作権法による違法ダウンロード規制の内容について詳しく解説します。

1. すべての違法アップロードコンテンツのダウンロードが違法化

今回の著作権法改正では、違法にアップロードされたコンテンツをダウンロードすることが一律違法化されました。

1-1. 現行法では録音・録画のダウンロードのみが規制対象
現行著作権法30条1項によれば、私的利用を目的としている限りは、原則として著作物の複製を自由に行うことができます。

しかし、同項3号に基づき、違法にアップロードされた録音または録画をダウンロード(複製)する行為については、私的利用目的であっても自由に行うことは認められません。
この著作権法30条1項3号の規定が、違法アップロードされた録音・録画をダウンロードすることが違法であることの根拠となっています。

逆にいえば、録音・録画以外の違法アップロードコンテンツを私的利用目的でダウンロードすることについては、現行法上違法とする根拠規定がありません。

そのため、漫画を筆頭とするその他のコンテンツについては、たとえそれが違法アップロードされたものであっても、事実上自由にダウンロードできてしまう現状が存在しています。

1-2. 著作権法改正により新たに規制対象となるコンテンツの例
2021年1月1日施行予定の新たな違法ダウンロード規制では、録音・録画に限らず、すべての違法アップロードコンテンツのダウンロードが違法となります。

たとえば、

・漫画
・書籍
・論文
・コンピュータプログラム

などが、新たに違法ダウンロ―ドの規制対象となります。


2. 例外的に違法性が否定される場合もある

改正著作権法によれば、すべての違法アップロードコンテンツのダウンロードは、原則として違法です。

しかし、著作物を適切に利用する観点から、やむを得ず発生してしまう違法アップロードコンテンツのダウンロードについては、例外的に違法性が否定されることになっています。

以下では、どのような場合に違法性が否定されるのかについて解説します。

2-1. ダウンロードの態様が「軽微なもの」である場合|分量や画質などから判断
ダウンロードによる複製の態様が軽微な場合は、違法化の対象外とされています。

軽微性の判断は、主に①分量と②画質の2つの観点から行われます。

①「分量」の観点から軽微なダウンロードと判断される場合
著作物全体の分量から見て、ダウンロードされる分量がごくわずかであると認められる場合には、「軽微なもの」と判断されます。

具体的には、以下のパターンが考えられます。

・数十ページ以上で構成される漫画の数コマ以内のダウンロード
・長文で構成される論文や新聞記事などの数行以内のダウンロード
・数百ページで構成される小説の数ページ以内のダウンロード

②「画質」の観点から軽微なダウンロードと判断される場合
画質が低いために、それ自体では鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロードした場合には、軽微なダウンロードと判断されます。

たとえば、SNSのサムネイル画像をダウンロードした場合などが考えられるでしょう。

2-2. 二次創作物・パロディをダウンロードした場合
二次創作者が、原作者の翻案権を侵害して作成・アップロードした二次創作物・パロディについては、それが違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードしたとしても、違法化の対象外とされています。

ただし、二次創作者の許可なく無断転載された二次創作物・パロディについて、無断転載を知りながらダウンロードする行為は、二次創作者の権利を侵害するものとして違法となることに注意が必要です。

2-3. 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合
著作権を保護する必要性と、ダウンロードの目的・必要性を比較衡量したうえで、「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある」と判断される場合については、例外的に侵害コンテンツのダウンロードが認められます。

2-4. 違法アップロードされたものと知らずにダウンロードした場合
侵害コンテンツのダウンロードが違法となるのは、そのコンテンツが違法アップロードされたものであることを認識していた場合に限られます。

仮に違法アップロードの事実を知らなかったとすれば、そのことについて重過失が存在していたとしても、ダウンロード行為が違法となることはありません。

3. 違法ダウンロードが刑事罰の対象となる条件は?

改正著作権法の下では、違法ダウンロード行為は単に違法であるというだけでなく、一定の場合には刑事罰の対象となります。

違法ダウンロード行為が刑事罰の対象となる条件について見ていきましょう。

3-1. 正規版が有償で提供されていること
違法ダウンロードが刑事罰の対象となるのは、正規版が有償で公衆に提供され、または提示されているものに限られます(改正著作権法119条3項1号、2)。

違法アップロードされた無償配布の著作物をダウンロードする行為も違法ではありますが、刑事罰の対象にはなりません。

3-2. 継続的にまたは反復して違法ダウンロードが行われたこと(録音・録画を除く)
録音・録画の違法ダウンロードについては、たとえ1回だけであっても刑事罰の対象になります(改正著作権法119条3項1号)。

これに対して、録音・録画以外の違法ダウンロードについては、「継続的にまたは反復して」行ったことが、刑事罰の対象となる要件とされています(同項2号)。
たとえば漫画の違法ダウンロードを1回だけ行ったという場合には、それ自体は刑事罰の対象とはなりません。

3-3. 権利者の告訴があること(親告罪)
違法ダウンロード行為について成立する犯罪は、全般的に親告罪とされています(改正著作権法123条1項)。

親告罪は、被害者の告訴がない限り、検察官が被疑者に対して公訴を提起することができない犯罪です。
そのため、違法ダウンロードを行った者を処罰するためには、権利を侵害された著作権者による告訴が必要となります。


4. 弁護士に相談しながら自社サービスの見直しを

コンテンツ・ビジネスを取り扱う事業主の方は、自社の運営するサービス上で、ユーザーによる違法ダウンロードが行われないようにする必要があります。
たとえば利用規約の内容を見直したり、ユーザーに対して注意喚起を行ったりすることにより、適切な著作物利用を促すことが考えられるでしょう。

また、自社の業務が違法ダウンロード規制を犯す形で運営されていないかについても注意を払わなければなりません。
特に、日常的にコンテンツのダウンロードが発生するような業態の場合は、オペレーションの細かい工程に至るまで違法性がないかどうかチェックすべきでしょう。

新たな違法ダウンロード規制との関係で、自社のビジネスについて遵法性を確認したいという場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。


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