司法試験の短答対策(上三法)


要約
①使う教材は(ア)肢別アプリ、(イ)短答六法、(ウ)裁断した短答パーフェクト、(エ)模試
②肢別アプリで知識の基礎を作り、短答パーフェクトで演習を行い、模試で実践する
③計画期間は1年の超長期型

Q.なぜ肢別を使うのか、短答パーフェクトでは駄目なのか

 純粋に問題数である。知識の基礎とする以上、過去問で習得可能な最大数を扱う。ここで取り扱わない条文や判例を学習後半に回すことでヤマ張り等にも役立つ。
 短答パーフェクトは①新司法試験で出題された問題を②体系別に掲載している。これを順番に解いていくと、どうしても肢の重複が生じる。そこで予備校講師は問題を選ぶことを推奨していることもあるが、それではあえて短答パーフェクトを用いる必要性に乏しい。そもそも来年度からは時間も確保されているため、3科目の短答は旧司含めて全て消化できる。そこで、本稿の方法論では短答パーフェクトの使い方を演習に絞っている。具体的には全問題を全年度で割り、大体民法37問、憲法20問、刑法20問の簡易模試として用いる。

Q.肢別アプリをどう使うのか

 肢別はアプリを用いる。できれば記録用と学習用で分けたい。幸い、肢別アプリは端末間の連携がないため、1回アプリを購入すれば2つの端末で別の使用方法を実践できる。私は記録用をiPad、学習用をiPhoneで運用していた。なぜ記録用を分けるかというと、後述するが、記録用端末で間違えた肢というのが学習者と法律家の常識との乖離がある知識・考え方であり、これを特に強く認識できるように(演習量を重ねることでその強調が希釈されないように)するためである。具体的には、①記録用は最初に解く時、復習日の最初に解く時に用いて、②学習用は記録が終わった後常に使う。学習用に最初の記録が残っていないためなにが間違えたのかわからなくなるが問題ない、ノルマの肢全てを完全に消化することが学習用の目的だからである。

Q.肢別アプリの具体的な運用方法について

STEP1.肢別第1クール(★約2700肢を潰す)7/1〜8/5(5週)
 まずは重要問題である★マークを3科目同時並行で潰していく。認知科学の知見(※外国語学習の研究ではある)によると、分散学習において、1年後に当該知識を記憶しておきたい場合には、その期間の10%ないし30%を空けると良いという(Bird,S.(2010)Effects of distributed practice on the acquisition of second language English syntax)。(https://www.researchgate.net/publication/231999890_Effects_of_distributed_practice_on_the_acquisition_of_second_language_English_syntax)

 そうすると、基本的には1.2ヶ月(5週間)ないし3.6ヶ月(14週間)の間に復習を必ずいれなければならない。ここでどのような計画を立てるかは読者のさじ加減ではあるが、筆者は第1クールでは初めて得る知識が多いことから、最短の1.2ヶ月で復習をできるようにするのが最適であると考えている。
 また、同様に1日で完全な理解ができると考えるのは現実的ではないため、筆者は4+2+1というサイクルで1週間を回していた。すなわち、4日間は前に進み、2日間は復習に徹し、1日は過去内容にさかのぼった復習をする、というものである。基本的に学習者の認識と法律家のそれとの間に乖離がある場合、学習者がそれを矯正するのは容易なものではない。筆者も住居侵入罪について毎回”侵入されることで法益侵害状態が存続しているから状態犯、そのため不退去罪も成立する”といった思考を無意識に追っており、毎回これを頭の中で継続犯と矯正している。したがってできる限り矯正の機会は多く確保しておくほうが良いだろう。
 そして、4日間に5週間を乗じて、20日間が第1クールの期間ということになり、そうすると1日136肢がノルマということになる。ここで注意したいのは必ずタイマーでノルマ達成までの時間を計測し、それが他の勉強とのバランスを欠いている場合には臨機応変に調整することも大事である。
 なお、136肢は3科目の総数である。1科目ずつやると当該科目に触れない期間が生まれてしまうし、次のクールへ移行しにくいため、同時にやる必要がある。そして、大体民法:憲法:刑法=3:1:1であるから、85:25:25肢程度で運用していく。

STEP2.肢別第2クール(全5600肢を潰す)8/6〜9/24(6週)
  次は全肢を潰していく。この際、重要問題(★マーク)2700肢に関しては既に潰している(少なくとも週に3回、その後の復習日にも触れている)ため、新たに学習する肢は2900肢である。これを基準にしてSTEP1.と同様に運用する。ただし、第1クールよりも量が多いため、1週間増やして6週で潰すのが良い。1週増やすことで+400肢確保できるため、第1クールと同じ量の肢に加えて★マークを回すことになる。
 なお、全肢をやる場合、どこまでやれば良いのかアプリでは分からない(重要問題★はソートできるが、除くソートはできない)。そこで、重要問題(★マーク)ソートと、未学習ソートを使い分けることになる。1日のノルマは270肢強となるが、重要問題は完全な復習のため、そこまで労力はかからないだろう(負担であれば適宜調整すること)。

STEP3.肢別第3クール(全5600肢を回す)9/25〜12/25、12/26〜3/26、3/27〜6/27
  肢別第3クールでは短答パーフェクトを用いた簡易模試と並行して行う。簡易模試で網羅的な学習は難しいので、ここでも全5600肢を回していくことになる。もっとも、そこまでノルマをこなす必要はなく、記憶から抜け落ちないようにするために135肢程度を3ヶ月単位で運用すれば足りる。

Q.裁断した短答パーフェクトの運用

簡易模試(9/25〜11/25、11/26〜2/26、2/27〜5/28…)
 本稿で短答パーフェクトは簡易模試として利用する。ここまで肢別アプリを用いて網羅的なインプットは終了している。そこでここからは常に実戦を想定した演習となる。具体的には短答パーフェクトを断裁し、1セット民法37問、刑法20問、憲法20問とし、それぞれ総問題数で割ればその回数分の模試が完成する。ここで重要なのが体系別に解くのではなく、当該回数分を飛ばして解いていく点である。例えば、民法で20回分の模試ができたのであれば、1セット目で解くのは第1問、第21問、第41問…第741問となる。これを制限時間内に解き、復習をして全肢が正解できるようにするのがノルマとなる。ここまで忠実にやっていればそうそう間違えない(時間切れになるかもしれないが)ため、復習時間も1,2時間で足りるはずである。これは毎日やるほうが効果的だと思う。

Q.模試の活用

 模試は通年実施されているが、少なくとも簡易模試(肢別第3クール)までは受けなくても良い。問題自体はメルカリで購入したり、周りの受験生から見せてもらえば良い。まず基礎的な、過去問をベースとした体系的知識を頭に詰め込むまではそれ以外の情報を入れる必要性は乏しい。ただし、民法の改正肢をできる限り見ておく必要はあるため、問題は手に入れよう。

Q.短答六法の使い方

 最初から短答六法にあれこれ記載していくと、最終的に自分がどこを忘れやすいのかがわからなくなる。司法試験の中日と3日目に確認できる量に留めるのが重要。そこで、短答六法は知識の確認と矯正に手こずっている箇所を視覚化するために用いる。例年8月から9月頃に発売されるのでその時に購入し、知識を入れるためにパラパラ見る程度で良い。肢別第3クールに入ってからは間違えた肢は学習者にとって記憶しにくい何らかの原因があるため、付箋を貼って常に確認できるようにしておく。もっとも、この点は記録用の端末を見ればすぐに分かるようにはなっている。
※条文を読むこと自体は非常に重要なので、短答六法を購入するまでは今使っている六法を、購入後は短答六法を常に確認すること。あくまで下線や付箋は不要、という趣旨である。

(参考)肢別の問題数
民法の肢別アプリ(R3版)※+R4があります
・民法総則:522肢(★252肢)
・物権  :392肢(★184肢)
・担保物権:370肢(★151肢)
・債権総論:499肢(★231肢)
・債権各論:603肢(★340肢)
・家族法 :521肢(★247肢)
・要件事実:49 肢(★20肢)
  合計 :2956肢(★1425肢)

憲法の肢別アプリ(R1版)※+R2-R4があります
・憲法総論 :91肢 (★49肢)
・基本的人権:492肢(★305肢)
・統治機構 :565肢(★263肢)
  合計  :1148肢(★617肢)

刑法の肢別アプリ(R1版)※+R2-R4があります
・刑法総論:551肢(★282肢)
・刑法各論:649肢(★329肢)
  合計 :1200肢(★611肢)

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