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【Audible】再生の物語『プラージュ』誉田哲也

温かな気持ちで聴き終えることのできた作品でした。

旅行会社で働く主人公の貴生(たかお)。日々の業務で、上手くいかないことばかりが続き、自暴自棄になったときに覚醒剤に手を出してしまう。
その後逮捕、起訴され執行猶予のついた判決を受ける。
運悪く、かろうじて暮らしていたアパートも火事で焼け出され、文字通り全てを失ってしまうのだ。
ふとした縁で、貴生はシェアハウスに身を寄せることになる。
一階は「プラージュ」という店で、昼間はランチを出し、夜はカジュアルな雰囲気のバーになる。居住空間はその2階だ。
オーナーの潤子さんの方針で、それぞれの部屋にはドアはなく、代わりにカーテンが下がっている。プライバシーもなにもあったもんじゃない。
しかも、そこに住む住人は皆、一癖ありそうな人ばかり…。

こんな設定で物語は進行していきます。
なんとか仕事を見つけて人生をやり直そうとする貴生ですが、世間は思った以上に厳しく、なかなか思うようにいきません。
時間のあるときには、潤子さんを手伝ってプラージュで働き始めます。
そうしているうちに、少しずつ、同居人たちの過去を知ることになっていくのですが…

大きな失敗を犯した若者が、人生をやり直そうと奮闘する様子は、思わず心の中で応援したくなります。さらに、同居人たちの過去を知ると、それぞれが抱えたものの暗さや重さに気持ちが持っていかれそうになります。
(注:ストーリーの中には、暴力など過激な描写が含まれており、聴いていて辛いところもありました。)

貴生は、あってないような最小限のプライバシーの生活の中で、同居人たちをはじめ、オーナーの潤子さんや、お店のお客さんたちとの交流から、少しずつ変わっていくのです。
もしかしたら、ドアの代わりのカーテンは、心の扉をいつも開いていなさいという暗示なのかもしれないなと思うのです。

同時に、罪を犯したものに対する社会のあり方を、読者に突きつけてくるのです。

12時間越えの大作ですが、あっという間に聴き終えました。

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