#590 「ビジネスパートナー事件」東京地裁(再掲)
2023年6月21日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第590号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【ビジネスパートナー(以下、B社)事件・東京地裁判決】(2022年3月9日)
▽ <主な争点>
転勤を拒んだ総合職社員に対する地域限定総合職との賃金差額返還請求など
1.事件の概要は?
本件は、B社がその従業員(総合職)であるXに対し、転勤を拒んだことを理由に給与規定に基づき、支払済の基本給の一部である12万円(地域限定総合職との半年分賃金差額)の返還およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<B社およびXについて>
★ B社は、リース事業、割賦販売事業等を業とする会社である。甲社および乙社はB社の子会社である(以下、3社を併せて「B社グループ」ということがある)。
★ Xは、2015年7月から正社員としてB社に雇用されており、現在は乙社に出向中である者である。
<B社の給与規程の定め(本件規定)、本件差額等について>
★ B社の給与規程には、次の定めがある。
第2条(給与決定の基準)
1 正社員の給与は、職群、職格、職級ごとにこれを定めるものとする。
2 正社員の職群の区分は、以下のとおりとする。
(1)グローバル総合職(社命で海外赴任中、もしくは海外赴任から帰任した者)
(2)総合職(勤務地を特定しない者)
(3)地域限定総合職(勤務地を特定の地域に限定される者)
(4)エキスパート総合職(ある分野のエキスパートとして認定された者)
3 グローバル総合職、もしくは総合職の正社員が会社が命じる転勤を拒んだ場合は、着任日が到来しているかどうかに関わらず、半年遡って差額を返還し、翌月1日より新たな職群に変更するものとする。なお、返還の対象はグローバル総合職の場合は総合職との差額、総合職の場合は地域限定総合職との差額とする。(以下「本件規定」という)
4 正社員の職群に変更が必要になった場合は、所定の手続きをもって1週間以内に申請するものとし、管理本部の承認をもって申請の翌月1日より適用とする。
★ Xは入社以降、2020年2月時点までは、職群は総合職であり、当時の基本給は月額33万2500円であった。他方、仮に地域限定総合職であった場合、当時の基本給は月額31万2500円であり、その差額は月額2万円であった(以下「本件差額」という)。
<本件転勤命令、B社からの返金請求等について>
▼ B社は2020年2月28日、Xに対し、東京都内から大阪支店への転勤を言い渡したが(以下「本件転勤命令」という)、Xは両親の介助の必要があるとして、これを拒否した。
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