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#327 「X社事件」東京地裁

2013年1月9日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第327号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【X社事件・東京地裁判決】(2012年3月30日)

▽ <主な争点>
強制わいせつ致傷罪により有罪判決を受けた元社員に対する退職金不支給など

1.事件の概要は?

本件は、X社と雇用契約を締結して労務を提供し、平成21年7月13日をもって合意退職したA(在職中、強制わいせつ致傷罪にて有罪判決を受けた)が同社に対し、雇用契約に基づく退職金支払請求権に基づいて、退職金1375万1750円等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<X社およびAについて>

★ X社は、Y社の100パーセント子会社として、平成11年7月に設立された会社である。事業内容は地域電気通信業務(県内通話にかかる電話、専用、総合デジタル通信などの電気通信サービス)およびこれに附帯する業務等である。従業員はグループ会社を含め、5万2100名(平成22年3月現在)である。

★ Aは、昭和62年4月、正社員として、当時のY社に入社後、平成11年7月にX社設立に伴って同社に転籍し、21年7月、退職した者である。なお、Aは入社から退職までの間、一度も懲戒処分を受けたことがなく、平成11年7月と12年2月の2度、全社員販売における成績を評価されて販売等のキャンペーン期間中の取り組みに対し与えられる表彰を3つ受けたことがある。

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<本件非違行為、退職手当の本件不支給に至った経緯等について>

▼ AはX社在職中の平成20年○月、自転車で通行中の当時16歳の女子高生(被害者)に対し、強いてわいせつ行為をしようと企て、自転車を停止させ、着衣の上から被害者の乳房を触るなどした上、突き飛ばして転倒させ傷害を負わせた(以下「本件非違行為」という)として逮捕され、その後、X社の社員、元社員である旨報道されて、強制わいせつ致傷罪で懲役3年、5年間の保護観察付き執行猶予付き判決を受けた。

▼ Aは弁護士を通じ、自主的に退職した場合には、後日懲戒解雇に相当するような事実が明らかになっても、懲戒解雇ではなく自己都合退職という取扱いとなる理解でよいか否かをX社に確認し、同社からその理解でよい旨の回答を受けた上で、21年7月、X社に退職届を提出して受理され、同月13日をもって同社を合意退職した。

▼ Aは同年9月、退職した時点での上司に対し、退職手当支給の可否について問い合わせたところ、同年12月、X社はAに対し、「AがX社在職中に強制わいせつ致傷罪を犯したことは就業規則により懲戒解雇処分に相当することを決定した」として、退職手当不支給の通知をした(以下「本件不支給」という)。

★ X社が就業規則に基づいて、Aに対して支払う場合の退職手当の金額は1375万1750円(以下「本件退職金額」という)となる。

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<X社就業規則、本件退職金規定等について>

★ X社就業規則には、退職手当等について、以下の条項(以下「本件退職金規定」という)が定められている。

第122条
(省略)
(省略)
 懲戒解雇となった場合には、第118条ないし第121条の規定により求められる退職手当は支給されない。
 諭旨退職となった場合に支給される退職手当の額は、第118条ないし第121条の規定により求められる退職手当の額の8割に相当する額とする。
(省略)
 退職手当が支給される前に在職期間における非違行為が発覚し、退職日までに懲戒処分が確定されない場合であって、かつ、その行為が懲戒解雇または諭旨解雇にあたると思料される場合は、その非違行為について、退職後においても懲戒に相当するか否か審査され、その結果、懲戒解雇または諭旨解雇に相当することとなる場合には、第3項および第4項と同様、それぞれ退職手当の支給を制限される(以下「本件不支給規定」という)。

3.元社員Aの言い分は?

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