見出し画像

#467 「F社事件」長野地裁松本支部

2018年8月1日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第467号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【F社事件・長野地裁松本支部判決】(2017年5月17日)

▽ <主な争点>
代表取締役の言動等と会社法350条に基づく責任など

1.事件の概要は?

本件は、F社の従業員であったAら4名が同社の代表取締役Eから在職中にパワーハラスメントを受けたと主張して、Eには民法709条(不法行為による損害賠償)、F社には会社法350条(代表者の行為についての損害賠償責任)に基づいて慰謝料等を求めたもの。

なお、上記の請求のほかに、Aら4名全員または一部から(1)平成25年夏季賞与を根拠なく減額されたとして減額分の請求、(2)違法な降格処分をされたと主張して、当該処分によって支給されなかった賃金相当額の請求、(3)会社都合の退職の係数によって退職金を支給すべきと主張して、支給された退職金との差額の請求があった。

2.前提事実および事件の経過は?

<F社およびAら4名について>

★ F社は、医療機器の販売を主な業務とする会社である。同社には取締役会が設置されておらず、取締役は代表取締役のみである。

★ Aは、昭和56年4月、F社に入社し、平成25年4月当時は営業統括事務係長の地位にあった者である。

★ Bは、昭和58年12月、F社に入社し、平成25年4月当時は経理・総務係長の地位にあった者である。

★ Cは、平成7年10月、F社に入社し、11年6月に退職したが、15年6月に再度入社した者である。25年4月当時は営業所において事務を担当していた。

★ Dは、平成23年4月、F社に入社し、25年4月当時は営業所において事務を担当していた者である。

★ 25年4月当時、F社本店所在地で常勤する女性従業員はAら4名のみであった。

--------------------------------------------------------------------------

<賞与の減額、降格処分、退職金の算定等について>

[25年度夏季賞与のマイナス考課]
▼ 25年4月にF社の代表取締役に就任したEは、25年度夏季賞与(評価対象期間:24年10月~25年3月)について、Aに対しては「C評価」として所定の算定額から20%分(12万6265円)を減額した賞与を支給した。また、EはBについて「D評価」として、所定の算定額から30%分(20万1277円)を減額した賞与を支給した。

[本件降格処分]
▼ F社は平成24年、18年から23年までの交際費等について修正申告を行って約2000万円を納付し、延滞税および重加算税も納付した(以下「本件修正申告等」という)。

▼ Eは賞罰委員会の意見を聴いた上で、上記交際費に関するBの不適切な経理処理が就業規則に定める懲戒事由に該当するとして、Bに対し、降格処分をした(以下「本件降格処分」という)。

★ Bの賃金は本件降格処分によって25年7月ないし9月分の額面について合計14万1341円を減額されたが、時間外手当7万4724円が支給されたため、差引6万6617円が減額されたこととなった。

[退職金の算定]
▼ 25年7月16日、A・BおよびCは退職願を提出し、Dは翌17日、退職願を提出した。その上で、Aらは同年8月2日まで出勤し、その日以降は有給休暇を取得して退職した。

ここから先は

2,413字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?