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#270 「コーセーアールイー事件」福岡地裁

2010年10月13日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第270号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【コーセーアールイー(以下、K社)事件・福岡地裁判決】(2010年6月2日)

▽ <主な争点>
内々定取消しの違法性と賠償額等

1.事件の概要は?

本件は、K社から採用についての内々定を得ていたXが、同社による内々定の取消しは違法であるとして、債務不履行または不法行為に基づいて、K社に対し、損害賠償を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<K社およびXについて>

★ K社は、不動産売買、賃貸、斡旋、仲介および管理等を行う会社である。

★ Xは、平成21年3月に大学を卒業する予定であったところ、20年4月、K社の会社説明会に参加し、適性検査や面接試験を経て、同年5月、同社から採用内々定を受けた者である。

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<本件内々定取消しに至った経緯等について>

▼ K社は20年5月30日頃、Xに対し、「採用内々定のご連絡」と題する書面(以下「本件内々定通知」という)および入社承諾書を送付し、Xは同月31日付で入社承諾書に記名、押印して返送した。

★ 本件内々定通知は、K社の人事事務担当であるAの名義で作成され、その内容は「今回は当社求人へご応募いただき、誠にありがとうございました。厳正なる選考の結果、貴殿を採用致すことを内々定しましたのでご連絡いたします。つきましては、同封の書類をご用意いただき、当社までご郵送ください。」というもので、提出書類である入社承諾書の提出期限が記載され、また、「※正式な内定通知授与は平成20年10月1日を予定しております。」と記載されていた。

★ 入社承諾書は、K社代表取締役宛で、「私○○は平成21年4月1日、貴社に入社しますことを承諾いたします。」という内容であり、上記○○に名前を入れ、末尾に、日付、現住所、氏名を記載して、押印するというものであった。

▼ Aは同年9月25日、Xに電話をかけ、内定式は行わないが、採用内定通知書の授与をK社事務所で行うことを伝えて、Xに都合を尋ね、内定通知の授与は同年10月2日に行われることとなった。

▼ K社はXに対し、同年9月29日付「採用内々定の取消しのご連絡」と題する書面(以下「本件取消通知」という)を送付し、Xは同月30日頃にこれを受領した。

★ 本件取消通知の内容は、「さて、皆様におかれましてもご高承のとおり、昨夏以降の建築基準法改正やサブプライムローン問題、さらには原油に代表される原材料、燃料等の暴騰といった複合的要因により、不動産市況は急激に冷え込み、弊社を取り巻く経営環境は急速に悪化しております。このような環境の下、弊社は中期的な事業計画を見直すこととなりました。新規学卒者に関しての採用活動についても慎重に検討してまいりました。その結果、来年度の新規学卒者の採用計画を取り止めることといたしました。つきましては、先般、ご連絡差し上げました採用内々定の件、誠に申し訳ございませんが、取消しさせていただくことになりました。大変残念な結果となりましたが、何卒、弊社の事情をご賢察いただけますようお願い申し上げます。」というものであった。

▼ Xは同年10月1日、K社に内々定取消しについて抗議するメールを送付したが、同社からメールも含めてXに対する詳しい説明等は行われず、Xの採用内定および本採用は行われなかった。

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