#179 「アイホーム事件」大阪地裁
2007年3月28日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第179号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【アイホーム(以下、A社)事件・大阪地裁判決】(2006年9月15日)
▽ <主な争点>
違法な業務命令および普通解雇(不法行為)
1.事件の概要は?
本件は、A社の従業員であったXが、同社から市に提出すべき書類の改ざんを命じられた上、書類の改ざん等の不正行為をXが主導したかのような風聞を社内に流され、さらにはすべてをXの責任として解雇されたことにより、多大な精神的苦痛を被ったとして、A社に対して慰謝料400万円を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<A社およびXについて>
★ A社は、介護保険法の規定による居宅介護支援事業、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法および児童福祉法に基づく居宅介護等事業などを業とする会社である。
★ Xは平成15年10月、A社の介護保険事業所「城東ケアセンター」の管理者兼サービス提供責任者として入社した。その後、16年5月にA社の支援費事業所「中央アセンター」のサービス提供責任者兼管理者となり、同年8月には高齢者障害者統括部長になったが、同年12月末日をもって解雇された。
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<本件実地指導について>
▼ 16年6月、A社の代表者であるBは大阪市(以下「市」という)から任意による実地指導(以下「本件実地指導」という)が行われるとの通知を受けると、居宅生活費等の不正受給の事実を隠蔽すべく、Xら従業員に書類の改ざんを指示した。
▼ B代表から上記書類の改ざんを指示されたXは通常の勤務が終了した後から作業を始め、夕食の支度に帰宅した後も再び会社に戻って翌朝5時頃まで作業を行い、仮眠しただけでそのまま翌日の勤務を行うという生活を続けた。
▼ また、B代表は本件実地指導を受けるにあたり、Xに対し「都合の悪いことや、少しでも分からない質問に対してはすべて知りませんで通すように」と指示した。
▼ 同月、市がA社に対し、本件実地指導を行い、指導内容に基づく改善報告書の提出を求めたところ、ヘルパー日程管理表の内容に明らかな矛盾があり、支援費の不正受給が疑われた。
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<本件不正受給の発覚からXが退職に至った経緯等>
▼ 同年8月、市はA社に対する業務監査を実施し、A社から提出を受けたサービス実施日報と請求書をつき合わせるなどして、精査した(以下「本件監査」という)。
★ B代表は外部から圧力をかけて本件監査を早く終了させようと考え、XやC主任が強く止めるのも聞かず、元暴力団関係者であった登録ヘルパーに頼んで、暴力団関係者を紹介してもらい、その者を本件監査に同席させた。
▼ 本件監査の結果、A社は15年4月から16年5月までの居宅生活支援サービスの提供にかかる居宅生活費を水増し請求して、4221万1290円を不正に受給し、さらに、同年6月から同年10月までの居宅生活支援サービスの提供にかかる居宅生活支援費を誤って過大に請求し、181万6460円を不正に受給していたことが判明した(以下「本件不正受給」という)。
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