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#105 「明治生命保険事件」東京地裁

2005年9月28日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第105号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 参考条文

労働基準法 第16条(賠償予定の禁止)
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」

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■ 【明治生命保険(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2004年1月26日)

▽ <主な争点>
海外留学から帰国後間もなく退職した従業員に対する留学費用の返還請求

1.事件の概要は?

本件は、M社の留学制度によって海外留学し、帰国後約13ヵ月で自己都合退職した元従業員Xに対し、M社が「留学費用は留学後5年間会社に勤務した場合は返還義務を免除する」旨の消費貸借契約により、同社がXに貸し付けたものであると主張して、費用の返還等を請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XがM社の留学候補生に選抜されるまでの経緯>

▼ Xは平成7年4月、総合職としてM社に入社し、支社等での勤務を経て、9年4月、本社国際部国際金融グループに配属された。

▼ 10年6月、XはM社の留学制度(以下「本件留学制度」という)に応募し、同年7月、海外大学院経営学修士課程留学候補者として選抜された。なお、留学候補生として選抜したことをXに伝える人事部・教育研修部作成の通知書には、費用について「本人の研修にかかる経費は原則会社負担」と記載されていた。

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<本件留学制度について>

★ 10年当時、本件留学制度はM社の職員能力開発制度の一つとして実施され、「職員の自発的意思に基づく社外セミナー・公的資格の取得等に対する支援を行う自己開発」に位置づけられていた。

★ 本件留学制度には例年30~40名の応募があり、うち7、8名が留学していたが、応募は本人の自由意思に委ねられており、所属長からの推薦も不要であった。

★ 10年4月、本件留学制度の概要を記載した冊子が職員に配布され、また応募方法等を記した通知が回覧されたが、どちらにも費用負担についての記載はなかった。

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<本件誓約書等について>

▼ Xはシカゴ大学ビジネススクールに合格した後の11年6月、下記内容のM社宛て書面(以下「本件誓約書」という)に署名押印し、M社に提出した。本件誓約書については、当時の教育研修部係長であったAを含め、M社側からは、留学費用とは何を指すのか、人件費とは何を指すか等について説明は行われなかった。

「このたび、社命により留学することとなりました。留学終了後、5年以内に万が一自己都合により退職する場合は、留学費用(ただし、人件費相当分を除く)を全額返還いたします。」

★ M社には、留学費用の範囲や定義に関し、従業員に周知された規則等は存在しなかった。

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<Xの留学から退職するまでの経緯等>

▼ Xは11年7月1日付で国際部から教育研修部へ異動し、留学終了後の13年7月1日付異動発令まで同部に所属していた。

★ Xは海外留学中、毎月の給与、旅費、福利厚生について、原則として海外駐在員と同じ扱いを受けた。費用に関しては、大学授業料や出願料のほか、語学研修費用、出国帰国時費用、引越費用および自動車保険料についてもM社が負担した。

★ Xは留学中、毎月研修状況等について簡単な報告書を提出することが義務づけられていたが、それ以外にM社の業務に直接関連のある課題や報告を課せられることはなく、長期休暇の利用にも制約はなかった。

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