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#465 「東京都港区医師会事件」東京地裁

2018年7月4日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第465号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【東京都港区医師会(以下、T会)事件・東京地裁判決】(2017年1月24日)

▽ <主な争点>
行為の悪質性と懲戒解雇事由該当性など

1.事件の概要は?

本件は、T会に雇用されていたXが懲戒解雇されたが、これが無効であるとして、労働契約上の地位の確認、ならびに解雇日から本判決確定の日までの賃金などを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<T会およびXについて>

★ T会は、地域住民の健康の維持および増進に関する事業、公衆衛生の向上に関する事業等を主な事業とする一般社団法人である。

★ Xは、平成9年4月、T会との間で労働契約を締結し、10年以降は経理業務を担当していた者である。なお、Xは16年4月、経理業務担当の主任職に昇格し、前任者から業務全般を引き継いだところ、当時現金で保管され、簿外処理がなされていた業務についても前任者のやり方を踏襲した。

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<本件懲戒解雇に至った経緯等について>

[医師国保茶菓代残金等]
★ T会では医師国民健康保険の高齢者表彰に伴い、東京都医師国民健康保険組合より茶菓子代として毎年1万円が交付され、その交付金から高齢表彰の対象者1名当たり1000円を交付していた。各表彰者に交付後の残金は26年度末時点で2万5000円である。

★ Xは経理担当職員として上記医師国保茶菓代の表彰者交付後の残金および中元・歳暮で受領した現金(以下「医師国保茶菓代残金等」という)を手提げ金庫で管理していたところ、27年7月30日時点で手提げ金庫内に確認された残金は6000円である。医師国保茶菓代残金等については、少なくとも27年7月まではT会において会計処理はなされていない。

[カルテ用紙等販売事業の収支]
★ T会では昭和40年代からカルテ用紙等販売事業が行われていたところ、当該事業の収支については従前から会計処理がされておらず、担当者が交代しても簿外処理が継続されていた。

[ビール瓶リターナブル代金]
★ T会では内部での懇親会用にビールを購入しているところ、その容器であるビール瓶を返還する際、購入時に保証金として支払っている部分について1本当たり5円の返還を受けていた(以下、この返還金を「ビール瓶リターナブル代金」という)。

★ Xはこのビール瓶リターナブル代金を自己の机の引出し内に保管していた。27年7月30日時点で確認された金額は1264円である。ビール瓶リターナブル代金については、少なくとも27年7月まではT会において会計処理はなされていない。

★ T会が一般社団法人に移行する制度改革の過程でも医師国保茶菓代残金等、カルテ用紙等販売事業およびビール瓶リターナブル代金の簿外処理については変更されず、代々の事務局長および次長からその管理の問題性が指摘されることはなかった。

▼ 27年4月に就任したA事務局長は同年6月頃、医師国保茶菓代の残金がT会の雑収入で会計処理されておらず、Xが手提げ金庫に現金で管理していることを知るに至り、Xに対して他に自らが管理する預金通帳や現金がないか、報告するよう指導した。

▼ T会は同年8月25日、Xに対して諭旨解雇を告げ、退職願の提出を促したが、Xから拒絶されたため、同日、Xに対して懲戒解雇を通知した(以下「本件懲戒解雇」という)。

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<T会の就業規則の定めについて>

★ T会の就業規則では以下の条項が定められている。

第46条 職員は、本会の目的を達成するため、本会の一員としての責任を自覚して誠実に職務を遂行するとともに、職場の秩序維持に努めなければならない。

第47条 職員は、明朗はつらつとした気風を養い、もって相互に和を図り、本会事業の円滑な運営に寄与するため、次の事項を遵守しなければならない。
(6)業務に関連して自らの利益を図り、または他より不当に金品を借用し、もしくは贈与を受けるなどの不正な行為を行わないこと。

第56条 懲戒は、その情状により、次の区分にしたがって行う。
(5)諭旨解雇 退職願を提出するよう勧告を行う。職員がこれに従わない場合は第6号の懲戒解雇とする。
(6)懲戒解雇 予告期間を設けることなく即日解雇する。

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