#424 「ゆうちょ銀行」静岡地裁浜松支部
2016年11月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第424号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【ゆうちょ銀行(以下、Y社)事件・静岡地裁浜松支部判決】(2014年12月12日)
▽ <主な争点>
配置転換命令の効力など
1.事件の概要は?
本件は、Y社の従業員であるXが同社に対し、Xに対する浜松店から静岡店への配置転換命令(本件配転命令)が無効であると主張して、静岡店に勤務する労働契約上の義務のないことの確認を求めるとともに、本件配転命令がXに対する不法行為を構成すると主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<Y社およびX等について>
★ Y社は、平成19年10月、郵政民営化法に基づき、日本郵政公社の郵便貯金事業等を承継した会社であり、全国に233の直営店を設置するとともに、代理店である日本郵便株式会社を通じて2万4千余りの郵便局貯金窓口を設置して業務を行う日本最大の金融機関である。
★ Xは、平成5年4月、郵政事務官として採用され、複数の郵便局を経て、16年4月から浜松郵便局貯金保険課に勤務し、郵政民営化および分社化に伴い、引き続き、Y社の社員として浜松店窓口サービス部に勤務していた者である。この間、妻と婚姻し、長女と長男をもうけた。
★ Xが勤務した郵便局のうち、浜松郵便局は普通郵便局、その他の郵便局は無集配特定局(郵便物の集配業務を行わない郵便局で、多くは比較的規模の小さい郵便局)であり、Y社浜松店および本件配転命令後の勤務先である静岡店はいずれも同社の直営店である。
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<Y社の就業規則の定め、本件配転命令に至った経緯等について>
★ Y社の就業規則には「社員は、業務上の都合により、出向、転籍、就業する場所若しくは従事する職務の変更(以下「人事異動等」という)を命じられることがある。」(10条1項)、「社員は、人事異動等を命じられたときは、その命令に従わなければならない。」(同条3項)との規定がある。
★ 平成21年、Y社の直営店および郵便局株式会社の運営する3郵便局において、Y社の社員ら複数名が顧客の預金等合計9億円以上を横領等していたこと(以下「本件横領事件」という)が発覚し、このことを契機として、Y社は同年12月、金融庁長官から業務改善命令(以下「本件業務改善命令」という)を受けた。
★ Y社は遅くとも21年11月までには同一店舗に長期間にわたり勤務している社員を計画的・段階的に異動させる制度(以下「本件人事異動制度」という)を実施することとしていたところ、本件人事異動制度は主として同一店舗での勤務が10年以上の社員を対象とするものであるが、同一店舗での勤務が10年未満の社員も対象となり得るものである。
★ Xは21年以降、年1回提出する社員申告書には一貫して「現職務を引き続きやりたい」と記載していたほか、勤務地についても「現勤務地を希望する」旨記載し、その理由として「子どもがまだ小さいため通勤時間が長いと育児・教育等に協力できず家庭的責任を果たせないため」などとしていた。
▼ Xは25年3月当時、浜松郵便局および浜松店での勤務が9年となっていたところ、Y社はXに対し、静岡店への異動を内示した上、同年4月1日付で静岡店窓口サービス部への異動を命じた(以下「本件配転命令」という)。
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