#17 「カントラ事件」大阪地裁
2003年12月10日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第17号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【カントラ(以下、K社)事件・大阪地裁判決】(2001年11月9日)
▽ <主な争点>
私傷病休職からの復職拒否、医師の診断、復職条件など
1.事件の概要は?
本件は、貨物自動車運転手として職種限定でK社に採用された後、慢性腎不全のために2年近く休職していたXがK社に対し、就労が可能になったとして復職を申し出たにもかかわらず、同社はこれを拒否した。その後、Xは復職したが、復職を求めたときから現実に復職するまでの間の就労拒否は理由がなく、不当であるとして、その間の賃金および賞与の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<Xについて>
★ Xは、昭和63年、K社に入社し、大型貨物自動車の運転手として勤務していた者である。
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<Xの休職、K社の産業医がXの復職を認めるまでの経緯等について>
▼ Xは平成6年10月および8年1月に実施された健康診断において、腎機能障害の疑いのため要精密検査との判定を受けた。
▼ 8年9月、Xは客先において突然腹痛に見舞われ、尿路結石と診断され、その後、慢性腎不全の治療のために休職することになった。
▼ 10年6月、XはK社に対し、S医師作成の診断書を提出し、復職したい旨を申し入れた。その診断書には「病名:慢性腎不全。疲労の残らない仕事量から開始し、腎機能をこれ以上悪化させないように検討しながら仕事量を考えていく必要がある」と記載されていた。
▼ K社はXに対し、同社の産業医であるT医師の診察を受けるように指示し、Xがこれに従って検査を受けたところ、同医師は「慢性腎不全および慢性肝障害のため就労不可」と診断した。
▼ その後、XはK社に対し、D医師作成の「慢性腎不全につき当分の間治療を要す。ただし、8時間を上限とした通常業務は可とする。可能なかぎり軽作業が望まれる。近距離の車輌運転は可。週2回の休日が望まれる」という診断書を提出したが、K社はT医師の診断書の内容からXの復職は困難であると判断して、復職を認めないとの旨をXに通知した。
▼ 同年8月、Xが出勤してきたため、K社はXが慢性腎不全のために入院治療が必要であることを理由に職場構内への入場を禁止した。
▼ 11年1月、T医師は「慢性腎不全により要治療。ただし、(1)長距離の運転をしない、(2)8時間以上の労働をしない、(3)週2回以上の休日を必要とする、(4)軽作業(デスクワーク等)の就労なら可とする」との診断書を作成し、Xの復職を認めた。
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<XとK社との交渉、Xの復職後の状況等について>
▼ XはK社と復職のための交渉を行い、復職の条件を記載した合意案(覚書)が作成された。その復職条件は(1)Xの慢性腎不全が将来悪化した場合は休職期間満了をもって退職する、(2)休職期間中の賃金は一切支払わない、(3)就労可否の判断をT医師に委ねる、(4)復職の期日は同覚書への調印後とする等であった。
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