#319 「フェイス事件」東京地裁(再々掲)
2012年9月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第319号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【フェイス(以下、F社)事件・東京地裁判決】(2011年8月17日)
▽ <主な争点>
高額報酬、職種固定の雇用契約における職種消滅を理由とする解雇など
1.事件の概要は?
本件は、F社と労働契約を締結し、同社の中国現地法人の社長として勤務したXが、業績不振による中国の現地法人売却のため、F社においてXが遂行する職務が消滅したとの理由での解雇が無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位の確認と給与の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<F社およびXについて>
★ F社は、デジタル・コンテンツの開発および配信等を目的とする会社である。
★ Xは、北京の大学を卒業後、電信電話技術等を研究する中国国営の研究所の研究員を経て、日本に留学した後、N社において技術職やマーケティング担当等に就いていた者である。
★ XはN社に在籍中、ヘッドハンティング会社から接触を受け、F社への転職を打診された。XはN社において年収1100万円を得ていたが、F社から「基本年俸1200万円以上、さらに奨励金を支払えるから中国における携帯電話の着うたコンテンツ・ビジネスに協力してほしい」と勧誘され、平成16年5月、F社に転職した。
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<XのF社入社から本件解雇に至った経緯等について>
▼ Xは16年7月から、中華人民共和国深圳市に所在したF社の中国現地法人であるAM社の社長として派遣された。なお、XはF社の東京オフィスに在籍したまま中国に派遣されることになっており、Xの派遣はいわゆる在籍出向であった。
★ AM社は、他社からの楽曲の配信権を取得し、電話会社を通じて携帯電話の着うた、着メロとして中国全土に配信するビジネスを行う会社であったが、業績が思ったより伸びず、赤字が続いたことから、F社は中国市場から撤退することとし、21年7月、AM社の株式を他社に売却した。
▼ Xは同月、F社に呼ばれ、AM社に残ってもよいし、F社に帰任してもよいが、F社には能力を発揮できる仕事はないと告げられた。
▼ Xは同年10月、F社から同年12月末日で辞めてもらいたいとの通告を受けたが、退職することを断ったところ、辞めないのであれば解雇すると通告された(以下「本件解雇」という)。
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<Xの雇用契約書、採用通知書の規定、報酬等について>
★ XとF社の間で取り交わされた雇用契約書には、Xの勤務地、職種を特定する規定はなく、Xの遂行業務について、以下のとおり規定されている。
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