#277 「東亜交通事件」大阪地裁
2011年1月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第277号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【東亜交通(以下、T社)事件・大阪地裁判決】(2009年9月3日)
▽ <主な争点>
資格(第2種免許)取得費等の返還義務の有無等
1.事件の概要は?
本件は、T社にタクシー乗務員として雇用されていたAおよびBが不当利得に基づき、同社に対して貸金返済名下に交付した金員の返還(Bのみ)および不法行為に基づき、慰謝料(Aは慰謝料170万円、弁護士費用17万円、Bは慰謝料80万円、弁護士費用8万円)等の支払いをT社に対して求めたもの(本訴)。これに対して、T社はAに対し、消費貸借契約に基づき、貸金の返済を求めた(反訴)。
なお、T社には、タクシー乗務員として勤務することを前提として、第2種免許を取得するための教習費等を貸し付ける制度を設け、実働800日の乗務日数を完了した場合には、返済義務を免除することとしていた。
2.前提事実および事件の経過は?
<T社、A、Bおよび本件貸与制度等について>
★ T社は、タクシー運送業を営む会社である。
★ AおよびBは、いずれもT社にタクシー乗務員として雇用されていた者である。
★ Aらは平成16年1月、求人広告等を見て、T社に対し、タクシー乗務員としての入社申込みをしたが、上記広告等には「2種免許取得費会社負担」「教習期間中日給1万支給」「支度金20万円住宅提供可」などと記載されていた。
★ T社は同社の乗務員として勤務することを前提として、制度の利用を希望する者に対して教習費等を貸し付ける制度(以下「本件貸与制度」という)を設けている。
★ 本件貸与制度に基づいて貸し付けられる教習費等の内訳は、教習所の授業料、教習費(1日1万円)、就職支度金(4回分割で計20万円)の合計約50万円(教習所・教習期間によって若干異なる)であり、返済期限は退職の時である。もっとも、この教習費等の貸与を受けた者がT社のタクシー乗務員として実働800日の乗務日数を完了した場合には、この返済義務を免除することとなる。
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<Aらの教習受講とT社による教習費等の支出について>
▼ Aは16年1月、財団法人大阪タクシーセンターで新任運転者研修を3日間受講した。また、同年2月、自動車教習所にて9日間教習を受け、試験に合格して普通第2種免許を取得した。その後、AはT社内で実施された教習を9日間受講した。
▼ T社は同月、自動車教習所に対し、Aの授業料21万5250円を支払った。また、同社はAに対し、上記に関する教習費(日額1万円)として12万円を交付し、さらに就職支度金として、同年3月、4月、5月および7月に各5万円を交付した。
▼ Bは16年1月、大阪タクシーセンターにて新任運転者研修を3日間受講した。また、同年2月、自動車教習所において合宿での教習を8日間受け、試験に合格して第2種免許を取得した。その後、BはT社内で実施された教習を9日間受講した。
▼ T社は同年1月、Bに対し、自動車教習所までの交通費として5190円を交付し、同年2月、自動車教習所に対し、Bの授業料17万2305円を支払った。また、同社はBに対し、上記に関する教習費(日額1万円)として11万円を交付し、さらに就職支度金として、同年3月、4月、5月および7月に各5万円を交付した。
▼ Aは18年12月、Bは17年5月にT社を退職したが、Aの実乗務日数は784日、Bの実乗務日数は363日であり、いずれも800日に足りない乗務日数であったことから、T社はAらに対して教習費等の返還を求め、Bはこれに応じて、消費者金融から借入れをするなどして48万7495円を支払った。
3.元タクシー乗務員Aらの言い分は?
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