#295 「首都高トールサービス西東京事件」東京地裁
2011年10月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第295号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【首都高トールサービス西東京(以下、S社)事件・東京地裁判決】(2011年1月26日)
▽ <主な争点>
就業規則の改定による賃金の減額等
1.事件の概要は?
本件は、平成19年5月にS社の就業規則が改定されたことによりAらの賃金が減額されたことについて、Aらが同社に対し、当該就業規則改定は無効であるとして、改定前の就業規則に基づく賃金との差額等の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<S社およびAらについて>
★ S社は、有料道路における料金収受およびこれに付帯する施設の警備ならびに係る受託業務等を目的とする会社である。同社は首都高速道路株式会社が所有、運営する首都高速道路のうち、東京都の西部地区の料金所などの業務を受託している。なお、S社は首都高速道路の料金収受業務を受託していた3社からの営業譲渡により、料金収受業務を統合して設立された会社である
★ A、BおよびCは、首都高速道路の料金収受業務の受託業務を行っていたセントラルハイウェイサービス社において収受員として勤務していたが、平成15年8月、営業譲渡に伴いS社に転籍し、白金料金計算所において勤務していたところ、定年により嘱託社員となった。
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<S社の賃金体系等について>
★ 19年5月以前のS社白金事業本部の嘱託社員用の就業規則(以下「旧就業規則」という)における賃金体系は、(1)本給として基本給および収受手当(定額)、(2)諸手当等として役職手当、精勤手当、残業手当、深夜手当、通勤手当、皆勤手当、休出手当および賞与が支給されていたほか、運用上の手当としてチーフ手当が支給されていた。
▼ S社は19年5月、新たに「嘱託社員就業規則」(以下「本件嘱託社員就業規則」という)および「嘱託社員賃金規程」(以下「本件嘱託社員賃金規程」という)を定め、施行した。
★ 本件嘱託社員賃金規程の概要は、以下のとおりである。
(1)賃金の構成は、基本給、役職手当、職務手当、時間外勤務手当、深夜勤務手当、年末年始勤務手当、通勤手当および賞与から成る。
(2)本件嘱託社員就業規則等に基づく賃金(以下「新賃金」という)と旧就業規則に基づく賃金(以下「旧賃金」という)を比較して、新賃金の方が低いときは、事情を十分に斟酌し最長3年間の経過措置を設けることができる。
▼ S社は本件嘱託社員就業規則等の施行に当たり、Aら一般収受員の新賃金について、基本給を一律に2号俸14万7250円とし、職務手当も一律に1等級の7万1250円とした。そして、旧賃金と比較して新賃金の方が低いAらについては、経過措置として、3年間かけて順次減額されるよう基本給の号俸が当てはめられるとともに調整手当が支給された。
3.嘱託社員Aらの言い分は?
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