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#218 「M社事件」東京地裁

2008年10月15日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第218号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【M社事件・東京地裁判決】(2008年3月10日)

▽ <主な争点>
配転命令拒否および私傷病欠勤中の行動等を理由とする解雇

1.事件の概要は?

本件は、配置転換を拒否したことなどを理由として普通解雇されたXが、当該解雇は解雇権を濫用したものであり、無効であると主張して、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、賃金の支払いおよび慰謝料の支払いをM社に対し、求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<M社およびXについて>

★ M社は、雑誌および書籍の出版等を目的とする会社である。

★ Xは、昭和57年4月、M社に入社し、以後、同社が発行する雑誌の編集部付のカメラマンとして稼働してきた者である。また、XはM社従業員らによって組織される労働組合(以下「組合」という)の組合員である。

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<本件配転および本件解雇に至った経緯等について>

▼ M社は平成17年9月20日、Xに対し、雑誌「ターザン」編集部から写真管理部への異動を内示し、同年10月5日付で配転を発令した(以下「本件配転」という)。

▼ Xは内示直後から本件配転に難色を示し、同年10月4日には、来客が同乗していたエレベータ内で、M社最高顧問に対し、「Aさん、カメラに戻してくれ」、「俺を戻さないと毎朝自宅に押しかけるぞ」等と大声で怒鳴りつけるなど、本件配転の発令日まで配転に応じなかった。

▼ Xは同月5日に辞令の受領を拒否し、同日「うつ病や不安障害」を理由とする診断書を提出して、翌6日以後M社を欠勤するに至った。

★ Xの欠勤は、M社就業規則に定める私傷病欠勤として扱われ、休職期間中の賃金は賞与を含めて全額Xに支給された。

▼ Xは休職期間中、「会社休んで鬱病日記(社長のパワハラとの闘い記録)」(以下「本件ブログ1」という)と題するブログを開設し、日々の出来事やM社について、「ゾンビ化した経営陣」、「腐臭すら漂う会社」、「社畜」といった批判的な表現を用いながら、Xの考え等を記載した。

▼ また、Xは「緊縛縄日記」(以下「本件ブログ2」という)と題するブログも開設し、女性を緊縛した写真を掲載するなどしていたほか、これらのブログの中で、日常生活に関する記載をしていた。

▼ Xは私傷病欠勤となった後も、しばしば出社し、雑誌「ターザン」編集部の出勤簿に自分の名前を書き加えた上、「出」と記載するなど本件配転命令に対する抗議活動を行っていたほか、組合大会に出席したり、組合の執行役員の選挙に立候補したりするなどの組合活動も行っていた。

▼ その後もM社は異動に応じるようXに要求していたが、Xはこれに応じず、18年6月7日付で、代理人に弁護士を立て、「本件配転命令にXは同意していないし、本件配転命令は不当労働行為であるから応じられない。以後の連絡窓口は代理人弁護士とされたい」などとする内容証明郵便をM社に送りつけ、異動に応じる意思を示さなかった。

▼ M社は同年9月16日、「貴殿の配転拒否および企業の名誉・信用毀損その他の誠実義務違反行為は懲戒解雇に該当する。しかし、会社としては、貴殿の将来ならびに親族等への影響を考慮し、貴殿を18年9月16日をもって通常解雇する」として、Xを普通解雇した(以下「本件解雇」という)。

★ 本件解雇に先立つ同月15日、M社が組合に本件解雇に対する事前了解を申し入れたのに対し、組合は、「解雇に関しては了承していない」としたものの、「ただし、Xさんを支援することはできない」、「執行部としては、近々始まる裁判の結果を待って、判断したい」とする見解を示していた。

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<M社の就業規則について>

★ M社の就業規則には、以下の定めがある。

第5条(義務)
3.上司の指示命令に従うとともに、同僚たがいに助け合い、協調の精神を失わないこと
5.会社の信用と名誉を傷つけないこと

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