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#626 「北海道(同性パートナーの扶養認定不可)事件」札幌地裁

2024年11月27日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第626号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【北海道(同性パートナーの扶養認定不可)事件・札幌地裁判決】(2023年9月11日)

▽ <主な争点>
同性パートナーを扶養認定しなかった地方公共団体等の判断など

1.事件の概要は?

本件は、北海道(以下、)の職員であったXが在職中、同性パートナーであるAが道職員の給与に関する条例(給与条例)9条2項1号の「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として同号の「配偶者」に該当し、また、地方公務員等共済組合法(共済組合法)2条4項の「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として同条1項2号イの「配偶者」に該当するとして(以下、給与条例9条2項1号の規定および共済組合法2条4項の規定を併せて「本件各規定」という)、道に対し、Aを扶養親族とする扶養手当に係る届出および寒冷地手当に係る世帯等の区分の変更の届出を行うとともに、共済組合に対し、Aを被扶養者とする届出を行ったが、道知事(道の職員の任命権者)および道の職員である組合員の組合員被扶養者証に係る事項を処理する共済組合の道支部長が、AがXと同性であることを理由に、上記各「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」とはいえず、上記各「配偶者」に該当しないとして、上記各届出に係る扶養親族または被扶養者の認定を不可としたことはいずれも違法であると主張して、国家
賠償法(国賠法)1条1項に基づき、道に対して、損害金合計233万2400円およびこれに対する遅延損害金の支払を求め、共済組合に対して、損害金合計234万7760円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<道およびXについて>

★ 道は、地方公共団体である。

★ Xは、1995年4月、道の職員に採用され、2006年5月から石狩支庁に勤務し、2019年6月に道を退職した者である。


<XとAとの関係に関する事情等について>

▼ Xは2018年春頃からSNSを通じてAと連絡を取り合うようになり、同年5月に初めて会った後、交際を開始し、同年6月、札幌市パートナーシップ宣誓制度(性的マイノリティの気持ちを受け止める取り組みとして、互いを人生のパートナーとして、日常生活において相互に協力し合うことを約束した関係であることなどを市長に対して宣誓する制度)の宣誓をした。

▼ XとAは同年7月、X方で同居を開始し、パートナーシップ契約(同性婚契約)を締結した。Aが受給していた生活保護はXの引き取りを理由に廃止となった。

▼ XとAは2019年4月、共同名義で分譲マンションを購入して引っ越し、マンションの入居者名簿のAの欄に「同性パートナー、主婦」と記載し、また、同マンションの所在地を本籍地とする届出を行った。

★ Xは世帯主として、2018年7月、Aの2018年度分の国民健康保険料合計5万8280円を、2019年6月、2019年度分の国民健康保険料合計7万9840円をそれぞれ支払った。


<本件訴訟に至る経緯等について>

▼ 2018年7月から2019年10月にかけて、Xは同性パートナーであるAが給与条例上等の「届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」であり「配偶者」に該当するとして、道および共済組合に対し、Aを被扶養者とする扶養手当等の届出(以下「本件各届出」という)を行ったが、道らは、AがXと同性であることを理由に、上記条例上の文言に該当するとはいえないとして被扶養者の認定を不可とした。

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