#562 「ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン事件」東京地裁(再掲)
2022年5月11日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第537号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン(以下、H社)事件・東京地裁判決】(2020年7月8日)
▽ <主な争点>
派遣先での従業員の問題行動を理由とする派遣元の解雇など
1.事件の概要は?
本件は、H社と期間の定めのある派遣労働契約を締結し、派遣先会社(Y社)に派遣されて就労していたXがH社に対し、(1)H社がXの苦情申出等に対して適切な対応をしなかったこと、(2)H社による違法な退職勧奨および派遣先からの暴力的な追い出し行為、(3)H社従業員がXを職場から退去させる際の名誉棄損行為、(4)H社および派遣先会社に都合のよい内容の示談書への合意の強要行為、(5)(6)H社従業員による脅迫行為2件、(7)H社がXに対してした2018年7月10日付解雇、(8)H社従業員による次の就業先の確約の一方的な破棄行為がそれぞれ不法行為に該当すると主張して、不法行為または使用者責任に基づく損害賠償請求として、損害賠償金157万3437円および遅延損害金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<H社およびXについて>
★ H社は、人材の募集、紹介および人事業務に関するコンサルティングならびに一般労働者派遣事業等を目的とする会社である。
★ Xは、2018年5月8日から(当初の契約期間は6月30日まで)、H社との派遣労働契約(以下「本件契約」という)に基づき、派遣先であるY社に派遣され就労していた者である。
<本件解雇に至った経緯等について>
▼ Xは当初は大きな問題はなく業務を行い、同年5月末頃、7月1日以降の本件契約の更新(7月1日から9月30日まで)を打診されたが、6月以降に徐々にY社における指揮命令者であるAや同僚のBに対し、業務内容や必要性について質問を重ねること等により業務に支障が出ることがあった。
▼ XとAおよびBとの間でコミュニケーションに問題が生じたため、Bは6月12日頃には「Xに対して仕事の指示をしたくない」旨、同月26日頃には「Xの業務は全て引き取るのでXに早く辞めてほしい」旨訴えていた。
▼ H社社員のCは同月25日、AおよびBと面談を行い、その際、Aらから「Xの派遣を取り止めてほしい」旨伝えられたが、CはY社に対し、1ヵ月間のチャンスをもらいたい旨を伝え、Xの派遣期間を同年7月26日までとする旨了承を得た。
▼ CはAおよびBとの面談後、Xと面談し、業務状況について確認したところ、Xは自分には非がなく、Y社社員に問題がある旨述べた。
▼ Cは6月26日、Xに対し、翌27日にC、AおよびBとの面談に出席するよう求めたところ、Xはこれを拒否した上で、Y社の人事責任者であるDと話がしたい旨主張するなどした。しかし、結局、同日の面談はキャンセルとなった。
▼ Cは同日、上司のEに対してXへの対応を相談し、その後はEとともにXへの対応をすることになった。
▼ 同月27日にはY社からH社に対してXの派遣を止めるように申入れがなされるに至り、XはY社との関係を調整しようとするCに対し、極めて反抗的な態度をとったほか、Eが翌28日に面談した際にも自宅待機命令にすぐには従おうとはせず、長時間にわたり理由を尋ねるなど食い下がっており、Eへの態度も反抗的なものであった。
▼ H社は7月3日、Xに対し、示談金として約3ヵ月分の給与である合計82万4600円を支払うこと等を内容とする示談書を送付した。しかし結局、Xは当該示談には応じなかった。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?