#482 「高知県公立大学法人事件」高知地裁(再々掲)
2019年3月6日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第482号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 参考条文
★ 労働契約法
(有期労働契約の更新等)
第19条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
─────────────────────────────────────
■ 【高知県公立大学法人(以下、K大学)事件・高知地裁判決】(2018年3月6日)
▽ <主な争点>
3年の更新上限の規定に基づく雇止めなど
1.事件の概要は?
本件は、K大学との間で平成25年4月に1年間の雇用契約を締結し、その後、2回にわたり同期間の雇用契約を更新したXが、K大学が28年4月以降は契約を更新しなかったことについて、労働契約法19条(有期労働契約の更新等)に基づき、契約が更新されたと主張して、同大学に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同月分以降本判決確定日までの給与等の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<K大学およびXについて>
★ K大学は、平成23年4月に高知県が設立した公立大学法人であり、当初は高知県立大学および高知短期大学の2大学を運営していた。
★ Xは、平成25年4月1日、K大学との間で1年間の雇用契約を締結し、契約職員として、同大学に所属する教職員らの給与計算等の給与関係全般に関する労働に従事してきた者である。
--------------------------------------------------------------------------
<K大学における契約職員、公募による再雇用、準職員採用制度等について>
[3年の雇用期間を超過した契約職員/公募による再雇用]
★ K大学の就業規則8条には「契約職員の雇用期間は、1会計年度内とする。ただし、3年を超えない範囲内において更新することができる。」との定めがあり、一部の例外を除き更新上限3年に達した契約職員の契約更新は行われていなかった。ただし、更新上限3年に達した契約職員がK大学による公募に申込みをした上で選考手続を経て再雇用されることはあった。27年度は更新上限3年に達した契約職員7名が公募手続を経て再雇用されたが、28年度は公募が行われなかった。
[準職員採用制度]
★ K大学は25年度より優秀な契約職員を雇用期間の定めのない準職員として内部登用する制度を導入するなど、非正規雇用から正規雇用を中心とした職員構成へ転換を図っていた。
--------------------------------------------------------------------------
<本件雇止めに至った経緯等について>
▼ Xは27年度実施の準職員採用試験を受験したが不合格となり、28年3月31日まで2度の更新を経て就労してきたが、同日以降は契約が更新されなかった(以下「本件雇止め」という)。同年度は契約職員の公募が行われなかったため、公募を経て採用される途もなかった。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?