#578 「日東電工事件」広島地裁福山支部
2022年12月28日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第578号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【日東電工(以下、N社)事件・広島地裁福山支部判決】(2021年12月23日)
▽ <主な争点>
合意解約申込みの撤回など
1.事件の概要は?
本件は、N社との間で有期労働契約(本件労働契約)を締結していたXが、Xについて辞職または合意解約を理由とする本件労働契約の終了の効果が生じておらず、かつ、本件労働契約が労働契約法19条によって更新されたと主張し、同社に対し、(1)Xが労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、賃金請求として、(2)2020年2月分の未払賃金11万3735円および遅延損害金の支払を求め、(3)2020年3月から毎月25日かぎり月額29万3118円の割合による金員および遅延損害金の支払を求め、(4)賞与請求として、同年6月分の未払賞与50万8600円および遅延損害金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<N社、Xおよび本件労働契約等について>
★ N社は、電気絶縁材料および電気機器用品等の製造、加工および販売等を目的とする会社である。
★ Xは、2019年3月1日、N社と有期労働契約(以下「本件労働契約」という)を締結した者であり、当初の雇用期間は同日から同年6月30日までであった。
★ XがN社に雇用された当時の求人票(以下「本件求人票」という)には、「契約更新の可能性あり(原則更新)」との記載があるが、本件労働契約の締結にあたって作成された雇用契約書には「契約の延長または更新はしない。ただし、(中略)契約を更新する場合がある」との記載があった。
<本件各退職願、本件話し合い等について>
▼ XとN社は本件労働契約を更新したため、Xと同社との雇用期間は2019年7月1日から2020年6月30日までとなった。
▼ 2020年1月30日、Xは所属する開発管理部のA部長に対し、N社宛の退職願2通を提出した。
★ 上記退職願のうちの1通は、「退職願」との表題の下に「今般、 年 月 日付で退職いたしたくご許可下さるようお願い申し上げます」という文言が記載され、作成日付欄に「2020年1月6日」の日付が手書きされ、Xの署名および押印があるほか、事由欄に「一身上の都合による」と手書きされていた(以下、同退職願を「本件退職願1」という)。
★ もう1通の退職願は、「退職願」との表題の下に「今般、2020年 月1日付で退職いたしたくご許可下さるようお願い申し上げます」という文言が記載され(「2020」、「1」の数字は手書き)、Xの署名および押印があるほか、事由欄に「別紙のとおり」と手書きされ、「退職理由(事由)」と題する別紙が添付されていたが、作成日付欄は空欄であった(以下、同退職願を「本件退職願2」といい、本件退職願1と併せて「本件各退職願」という)。
▼ 同年2月3日、XはA部長らとの間で話し合い(以下「本件話し合い」という)をした。その際、Xは本件退職願2の日付欄に作成日付を手書きしたが、本件話し合いの終了までの間に本件各退職願の返還を求めることはなかった。
▼ N社は同日付の通知書をXに送付した。同通知書には「貴殿が2020年1月30日に提出された「退職願」につきまして、1月31日に社内決裁が済んでおります。2月3日に退職撤回の申し入れがあったようですが、すでに決裁されておりますので、認められません」などと記載されている。
<労働審判手続等について>
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