#541 「Y交通事件」大阪地裁(再々掲)
2021年7月7日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第541号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【Y交通(以下、Y社)事件・大阪地裁決定】(2020年7月20日)
▽ <主な争点>
性同一性障害のタクシー運転手への身だしなみ規定の適用など
1.事件の概要は?
本件は、性同一性障害の診断を受けたX(タクシー運転手)が雇用されているY社に対し、同社の責めに帰すべき事由による就労拒否があったと主張して、民法536条(債務者の危険負担等)2項に基づき、賃金の仮払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<Y社およびXについて>
★ Y社は、大阪市内を主要営業区域とした一般乗務旅客自動車運送事業を営むタクシー会社である。
★ Xは、平成30年11月、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結し、タクシー運転手として勤務してきた者である。
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<Xの性同一性障害、本件苦情、本件面談等について>
★ Xは昭和35年生の男性であるところ、医師により性同一性障害の診断を受けており生物学的性別は男性であるものの、性別に対する自己意識は女性である。そのため、ホルモン療法の施行を受けつつ、眉を描き、口紅を塗るなどの化粧を施し、女性的な衣類を着用するなどして、社会生活全般を女性として過ごしており、タクシー運転手として勤務中も顔に化粧を施していた。
▼ Y社は令和2年2月7日の午前4時頃、男性の乗客からXに男性器をなめられそうになったとの苦情(以下「本件苦情」という)を受けた。
▼ 同日、Y社を含むグループ会社の従業員ら(A渉外担当ら)3名はXとの間で面談(以下「本件面談」という)を実施し、Xに対し本件苦情や乗車拒否、運賃の過大請求などの苦情が寄せられているとの指摘を行い、Xに「乗務させられない」と告げたり、退職を示唆したりする等した。
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