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#198 「中央労働基準監督署長事件」東京地裁(再掲)

2007年12月26日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第198号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【中央労働基準監督署長事件・東京地裁判決】(2007年3月28日)

▽ <主な争点>
社内での飲酒をともなう会合後の事故は通勤災害に当たるか

1.事件の概要は?

本件は、Xが中央労働基準監督署長(以下「C監督署長」という)に対し、夫である亡きYの死亡は通勤災害によるものであるとして、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という)に基づく療養給付、遺族給付および葬祭給付の各支給を請求したが、C監督署長は亡きYの死亡は通勤災害によるものであるとは認められないとして、これらを支給しない旨の処分をしたことから、その取り消しを求めて、審査請求および再審査請求をしたものの、いずれも棄却されたため、上記不支給処分の取り消しを求めたもの。

なお、亡きYは勤務時間外である午後5時以降、社内事務室において開催された飲酒をともなう会合に出席し、その帰り道に負傷し死亡した。

2.前提事実および事件の経過は?

<XおよびY、本件会合等について>

★ Xの夫であるY(昭和30年生。死亡時44歳)は、昭和49年4月、日特建設(以下、N社)に雇用され、平成11年4月から、同社の東京支店の事務管理部次長の役職にあった。Yの自宅から東京支店までの通勤時間は40分強であり、地下鉄日比谷線築地駅から同支店までは歩いて約10分の距離であった。

★ 東京支店においては、毎月初めに午後1時から5時まで、主任会議が開催されており、関東近県の建設現場の現場主任以上、支店長と事務管理部の主任以上、本店から役員ら総勢80名ほどが参加していた。

★ また、主任会議終了後、勤務時間外である午後5時以後、社内において飲酒をともなう会合(以下「本件会合」という)が通常午後7時頃まで開催され、主に主任会議に出席しない事務管理部等の従業員が出席した。本件会合については、開催の稟議も案内状もなく、また、議題もなく、事後に議事録等も作成されなかった。

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<本件事故およびYが死亡に至るまでの経過>

▼ Yは、平成11年12月1日、午後1時から主任会議に出席し、これが終了した午後5時過ぎから、東京支店内事務室において行われた本件会合に出席した。Yは午後8時頃までの間に缶ビールを約3本飲み、紙コップ半分位のオンザロックのウイスキーを約3杯飲んだ後、午後9時15分頃から椅子に座ったまま居眠りをした。なお、Yは酒に強かったが、部内の配置換えにより疲労していた上、風邪をひいて体調が悪かったため、飲酒量は通常より控えめであった。

▼ その後、Yは午後10時15分頃、退社して、部下とともに帰宅の途についたが、10時27分頃、築地駅の入口下り階段から、18段下の踊り場まで転落して後頭部を打撲し、負傷した(以下「本件事故」という)。

▼ Yは、直ちに病院に搬送され、治療を受けたが、意識を回復しないまま骨折をともなう頭蓋内損傷により、同月13日に死亡した。

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<Xが本件訴訟に至るまでの経緯>

▼ Yの妻であるXは、12年1月および同年2月、亡きYの死亡事故が、事業所における就労を終えて、通常の帰宅経路を使って自宅に帰宅する途上での事故であるから、労災保険法第7条1項2号にいう「通勤災害」に該当するとして、C監督署長に対し、療養給付、遺族給付および葬祭給付の各請求を行った。

▼ C監督署長は、同年12月15日、本件事故は通勤災害には当たらないとして、Yの各請求に対し、いずれも給付しない旨の決定をした(以下「本件処分」という)。

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