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#222 「パナホーム事件」東京地裁

2008年12月10日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第222号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【パナホーム(以下、P社)事件・東京地裁判決】(2007年12月17日)

▽ <主な争点>
営業譲渡により転籍した場合の転進支援金の算定に係る勤続期間の通算

1.事件の概要は?

本件は、退職したXが、通常退職金およびP社の「特別転進支援制度」に基づく転進支援金等の支払いを同社に対し、求めたもの。

なお、Xはパナホーム京葉(以下、K社)に雇用されていたところ、K社は千葉パナホーム(以下、C社)に営業譲渡され、Xの従業員としての地位もC社に承継された。その後、C社はP社に吸収合併され、Xの従業員としての地位もP社に承継された。

主な争点は、XとK社およびC社との間で、両社での勤続期間を通算する合意をしたか否かである。

2.前提事実および事件の経過は?

<P社およびX等について>

★ P社は、住宅建築・販売等を業とする会社である。

★ Xは、昭和62年3月にN社に雇用されたところ、同社は平成9年4月にK社に商号変更した。K社は11年10月、C社に営業譲渡され、Xの従業員としての地位も同社に承継された。その後、14年10月、C社はP社に吸収合併され、Xの従業員としての地位もP社に承継された。

★ Xは7年5月から11年10月まで、K社の従業員兼務取締役を務めていたが、取締役報酬は全く支払われていなかった。

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<本件制度およびXが退職するまでの経緯等について>

▼ 11年9月下旬、C社に転籍することになったK社の全従業員は、退職金についてはC社の支給基準によることとなること、勤続期間は両社の分を通算すること等を記載した転籍に関する承諾書に署名し、K社とC社の支給基準のそれぞれにより算定した額の比較の表を示され、勤続期間を通算することを確認した。

▼ Xは、上記の営業譲渡に伴うC社への転籍に近い11年10月頃、K社から200万6920円、独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部(以下「中退共」という)から55万5180円、M生命保険から176万8800円、合計433万0900円を受領した。

▼ Xは、17年12月、P社の提案する「特別転進支援制度」(以下「本件制度」という)に応募し、18年1月、同社を退職した。

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