#403 「メルセデス・ベンツ・ファイナンス事件」東京地裁(再々掲)
2016年1月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第403号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【メルセデス・ベンツ・ファイナンス(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2014年12月9日)
▽ <主な争点>
中途採用者に対する普通解雇など
1.事件の概要は?
本件は、M社との間で雇用契約を締結し、稼働していたところ解雇されたXが当該解雇は解雇権を濫用したものであって無効であると主張して、同社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに賃金および賞与ならびにこれらに対する遅延損害金の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<M社およびXについて>
★ M社は、自動車、建設機械等の輸出入、売買、割賦販売、ローン提携販売、割賦販売あっ旋、リース、賃貸借、保守管理等を目的とする会社である。
★ Xは、平成18年9月、21年間勤務したY銀行からM社に転職し、同社との間で期間の定めのない雇用契約を締結した(以下「本件雇用契約」という)者である。
--------------------------------------------------------------------------
<本件合意、本件解雇に至った経緯等について>
▼ Xは与信業務部のローン資産管理課課長代理として勤務し、21年1月には債権管理部の課長代理に配置換えとなった。
▼ Xは遅くとも同年5月頃以降は「雇用契約条件違反について」と題する書面をM社に送付するなど、自分が与信審査業務という職種限定で採用された旨主張し、与信審査部門への配置換えを求めていた。
▼ Xは同年8月、東京労働局に対し、与信審査部門への配置換えを求める斡旋申立てをした。
★ この斡旋手続において、XとM社は(1)Xは職種限定採用でなかったことを認める、(2)Xは今後異動に関する異議を申し立てない、(3)M社は同年11月1日から6ヵ月間を経過観察期間とし、その間の業績(勤務態度や他の従業員との業務上のコミュニケーション等の関わり方を含む)を公正に評価し、同社が不適当と認めた場合には普通解雇とすることを条件として、Xを与信審査部門に異動する旨の合意をした(以下「本件合意」という)。
▼ Xは同年11月、与信審査課の課長代理に配置換えとなった。
▼ M社はXについて、経過観察期間(21年11月1日~22年4月30日)中の評価を実施した後、第2評価期間(22年10月26日~12月15日)および第3評価期間(23年9月16日~11月30日)を設定し、それぞれ評価を実施した。
▼ M社は23年12月、Xに対し、同月31日をもって普通解雇する旨通知し(以下「本件解雇」という)、解雇予告手当を支払った。なお、本件解雇は本件合意書3項に基づく解雇が認められることならびに従業員就業規則第41条3号および7号に基づく解雇が認められることを理由としていた。
--------------------------------------------------------------------------
<M社就業規則における普通解雇に係る規定について>
★ M社就業規則第41条は、普通解雇について次のとおり定めている。
「第45条第6号による懲戒解雇の他、次の各号の一つに該当すると会社が判断した場合、従業員を解雇することがある。
(中略)
3.協調性を欠き、他の従業員の職務に支障をきたすとき
(中略)
7.その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき」
3.元社員Xの主な言い分は?
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?