#66 「オプトエレクトロニクス事件」東京地裁(再掲)
2004年12月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第66号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【オプトエレクトロニクス(以下、O社)事件・東京地裁判決】(2004年6月23日)
▽ <主な争点>
「悪い噂」を理由とする内定取消
1.事件の概要は?
本件は、O社から採用内定を受けながら、「悪い噂」(以前の勤務先在職時の勤務態度、勤怠について問題がある等)があることを理由に内定を取り消されたXが同社に対し、内定取消は無効であり、労働契約は成立していたと主張して、債務不履行および不法行為に基づき、未払い給与等の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
(注)日付はすべて、平成15年のもの。
<XがO社の採用内定に至ったの経緯等について>
★ O社は、コンピューター周辺機器の設計・開発・製造および販売等を業とする、従業員数約280名の会社である。
▼ Xは、A社に勤務していたが、平成15年3月頃から転職を希望して求職活動を始め、人材バンク会社のG社を通じて、同年5月、O社の入社試験を受けた。
★ IT関係の開発・製造・販売を業とするA社とO社との間には取引関係があり、A社からO社に転職した者も数人いた。そのうち何名かは当時O社に在籍していた。
▼ O社はXを配属する予定先の了解をとることなく、6月16日付でXに対し、7月1日から第一営業部で雇用するとの通知をした(以下「本件採用内定」という)。
▼ XはO社以外の会社の採用内定、最終面接をすべて断り、O社に入社することを決断した。そして、XはA社に対し、6月末で退職するとの届出をし、身辺整理をしてO社に入社するのを心待ちにしていた。
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<本件採用内定保留からO社がXを再面接するまでの経緯について>
▼ Xは6月27日、転職の紹介を受けたG社から、O社が本件採用内定を留保したいと言ってきているとの連絡を受けた。同月30日、XがO社に電話連絡したところ、同社はXに対し、「悪い噂」があり、その噂の真偽調査のため。採用内定が留保になっていると述べた。
▼ O社は「悪い噂」の内容は、A社において(a)Xの勤務態度、勤怠について問題があること、(b)空売りがあること、(c)客先とのトラブルがあること、(d)社内的に問題視されていること、(e)退職に至る経緯が不明瞭であることであると述べ、Xに対し、これらについてA社の釈明文書を提出してほしい旨を依頼した。
▼ XはO社の指示にしたがい、A社に依頼して、Xの「悪い噂」が事実無根であるとの釈明文書を作成してもらい、同月30日、O社にこれを提出した。同日、調査のためA社を訪問したO社の人事担当者に対し、A社の役員3名は上記釈明文書と同様の意見を述べ、Xには問題となるような点はないと告げた。
▼ しかし、O社は本件内定通知を保留するとの態度を崩さず、契約の始期である7月1日が到来したにもかかわらず、Xに自宅待機を命じ、「社長がもう一度面接をすると言っているので、さらにあなた自身の釈明文書を提出するよう」指示した。
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<再面接後、一旦本件採用内定を決定し、それを取り消すまでの経緯について>
▼ Xは指示通りに「悪い噂」が事実無根であることを内容とする釈明文書をO社に提出し、7月3日、同社の社長および会長の再面接を受けたところ、社長らはXに対して、再びXをO社の従業員として雇用する旨を約束した。翌4日、同社はXに対し、「本日営業会議で正式にXさんの配属先が決定されました。つきましては、ご入社可能の時期はいつかお教え下さい」とのメールを送信した。
▼ ところが、O社の社長はXの配属先として予定していた新規開拓部の責任者がXの受け入れを拒否していること、以前A社からO社に転職した元従業員からXには「悪い噂」があるとの話を聞いたことから、Xの採用を見送ることを決断した。
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