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#80 「鳴門労基署長事件」大阪地裁

2005年3月23日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第80号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 用語の解説

業務災害」とは、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害または死亡のこと。「業務上の事由による」とは、業務と傷病等との間に経験則上、相当因果関係が存在することを意味し、この相当因果関係を「業務起因性」という。「業務遂行性」とは、労働契約に基づき、事業主の支配下(指揮命令下)にある状態のことで、労働災害はこの状態において傷病等が発生したものを指し、業務上の傷病等と認められるためにはその傷病等に「業務起因性」が成立していなければならず、「業務起因性」が成立するためにはその前提として「業務遂行性」が認められなければならないことになる。業務災害の認定は、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件によって認められる。

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■ 【鳴戸労基署長(以下、N労基署長)事件・大阪地裁判決】(2000年8月18日)

▽ <主な争点>
海外出張中の殺害事故が労災に該当するか否か

1.事件の概要は?

本件は、Yがその亡夫であるXは業務上の事由により死亡したものである旨を主張して、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という)に基づき、N労基署長に遺族補償給付等の支給請求をしたところ、N労基署長からXの死亡は業務上の事由によるものではないとして、これらを支給しない旨の処分をうけたため、N労基署長に対し、同処分の取消しを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XおよびM社について>

▼ Xは平成7年11月、ワカメの加工販売等を業とする松浦商店(以下、M社)に入社し、業務本部長としてワカメの買付け等のため、中国へ複数回出張していた。

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<Xの本件出張中の死亡等について>

▼ XはM社から、9年4月14日から同月19日までの間、中国の大連市へ出張するよう命じられた(以下「本件出張」という)。出張の目的は、M社の合弁会社であるT水産において、ワカメ加工の技術指導をすること等であった。

▼ Xは同月14日、M社の同僚らとともに中国に入国し、T水産においてワカメの検査や乾燥ワカメの技術指導などを行った。

▼ Xは同月18日午後、宿泊先である大連市内Fホテルの自室(16階)付近の廊下において、意識不明で倒れているところを発見され、直ちに病院に搬送されたが、左けい動脈を刃物で切り付けられており、出血多量により死亡した。なお、Xの所持品のうち財布(約8万円在中)がなくなっていた。

★ Fホテルは25階建てで大連市内では比較的裕福な階層の者が宿泊する最高級ホテルとされていた。ただい、当時Fホテルは非常階段等を利用して、フロントを通過することなく、外部から客室へ容易に出入りできる状態であった。

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