#357 「HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件」東京地裁(再掲)
2014年3月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第357号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド(以下、H社)事件・東京地裁判決】(2013年1月18日)
▽ <主な争点>
解雇予告手当請求権と消滅時効など
1.事件の概要は?
本件は、XがH社に対して、同社が支払った解雇予告手当の額には不足があると主張して、同未払分として190万円余およびこれに対する遅延損害金ならびに同額の付加金等の請求をしたもの。
H社は平成20年3月7日、Xに対し8日間の予告期間をおいて、同月15日付で解雇するとの意思表示をし、解雇予告手当として79万円余を支払った。
2.前提事実および事件の経過は?
<H社、Xおよび本件雇用契約等について>
★ H社は、通信・情報関連ハードウェアおよびソフトウェアの開発、保守および管理ならびに情報・電算処理業、労務管理事務代行業等を目的とし、バハマ国法を準拠法とする外国会社であり、世界的金融グループであるHSBC(香港上海銀行)グループの労務管理事務の代行等を行っている。
★ Xは、平成19年12月、H社と「期間の定め…なし、賃金年俸…1250万円」等とする内容の雇用契約(以下「本件雇用契約」という)を締結した者である。
★ XとH社は本件雇用契約の締結に際し、いずれかが雇用の終了を希望する場合、(1)少なくとも1ヵ月前に書面により通知しなければならないこと、(2)同社がこの通知に代えて、公租公課控除後の解雇予告手当を支払って即時Xの雇用を終了させることができることを定めた。
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<本件解雇、解雇予告手当の支払い等について>
▼ XはH社に在籍したままHSBC東京支店に出向し、同支店個人金融サービス本部マルチチャネル・ディベロップメント部にヴァイス・プレジデントとして配属され、同月17日から20年3月7日まで同支店汐留オフィスにおいて勤務していた。
▼ H社は20年3月7日、Xに対し、8日間の予告期間をおいて同月15日付で解雇するとの意思表示をし(以下「本件解雇」という)、同月14日、解雇予告手当として、79万7311円を支払った。
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<従前X・H社間に係属してきた関連訴訟等について>
▼ H社は東京地裁に対し、Xを相手方として、従業員たる地位不存在の確認を求める労働審判を申し立てたところ、同申立てを棄却する審判がされたため同審判に対して異議を申し立て、これにより同社による訴え提起が擬制されたところ、XはH社を相手方として、従業員たる地位の確認を求めて反訴を提起し(以下「訴訟1」という)、同社は上記本訴を取り下げた。
▼ 東京地裁は22年3月15日、Xの上記請求を棄却する判決を言い渡したところ、Xが控訴を提起したが、東京高裁も上記一審判決の結論を維持し、Xが上告および上告受理申立てをしたが、最高裁は24年3月、上告棄却および上告不受理の決定をした。これにより、XがH社による20年3月15日付の本件解雇により同社の従業員としての地位を失っており、現にH社の従業員としての地位を有しない旨の上記一審判決が確定した。
▼ また、Xは東京地裁に対し、H社を相手方として、割増賃金499万余の支払い等を請求する訴訟を提起し、東京地裁は23年12月、割増賃金のうち324万余の支払いを命じた一部認容判決を言い渡したとこと、X・H社とも控訴を提起した。
▼ 東京高裁も24年8月、上記一審判決の結論を維持するとともに、Xが控訴審においてなした拡張した付帯請求を棄却したところ、X・H社とも同判決を不服として上告した。
▼ Xは23年12月、H社に対し、解雇予告手当の不足金等295万余の支払いを請求する旨の書面を送付したところ、24年2月、同社はXに対し、上記書面に対する回答として、消滅時効の主張等をした。
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