#103 「エムディアイ事件」東京地裁(再掲)
2005年9月14日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第103号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【エムディアイ(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2000年3月17日)
▽ <主な争点>
営業社員に対する歩合給の支給日在籍要件等/就業規則の効力・適用等
1.事件の概要は?
本件は、M社を退職した営業社員のXが雇用契約に基づいて支給される歩合給および時間外勤務手当が未払いであるとして、同社に対して、その支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<M社およびXについて>
★ M社は共同住宅の注文建築請負および賃貸、管理、リゾート開発等を業とする、従業員約2,700名の会社である。
★ Xは平成9年12月、M社と期間の定めのない雇用契約を締結し(以下「本件雇用契約」という)、支店にて営業に従事していた。なお、XのM社における賃金は、固定給プラス歩合給であり、勤務時間は午前9時から午後6時までであった。
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<M社在籍中のXの勤務状況等>
▼ Xは歩合給の支給があることに魅力を感じて、M社に入社したものの、午後10時頃までの残業が日常化し、しかも時間通りの残業代が支払われないことから不満を抱くようになったり、仕事に疲れを感じるようになったりしたため、10年6月上旬から上司に退職の相談をするようになり、同月末をもってM社を退職した。
★ M社では、実際に時間外勤務手当の支給対象となるのは月間20時間までの時間外勤務であり、それを超える分について、時間外勤務手当は支給されなかった。
▼ XがM社に入社してから担当したのは下記(a)および(b)の各契約である。いずれも訪問の約束から契約の締結までXは関与したが、ほぼ全面的に上司である課長の指導や補助を受けながら業務を遂行した。なお、両契約ともXの退職後に契約内容が変更されている。
(a)M邸建築工事
代金 3,660万円 10年7月着工 同年10月29日完成
(b)Y邸建築工事
代金 2億9,250万円 11年1月着工 同年4月25日完成
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<M社における歩合給の支給要件等>
★ M社において、営業社員に対する歩合給は、営業活動により建物建築工事請負契約が締結になった場合、建物代金の合計0.8パーセントで、その支給時期は建物の着工時に50パーセント以上の入金があった場合に0.4パーセント、完工時に100パーセントの入金があった場合に残り0.4パーセントというものであった。
★ 営業社員が異動により、支給日までに担当者でなくなった場合は歩合給の受給資格を失わないが、支給日までに退職した場合、歩合給は支給されず、担当者を引き継いだ後任者が受給する取り扱いであった。
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