#212 「ゴムノイナキ事件」大阪地裁(再掲)
2008年7月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第212号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【ゴムノイナキ(以下、G社)事件・大阪地裁判決】(2007年6月15日)
▽ <主な争点>
退職手続における退職事由の取扱いと使用者の過失・不法行為
1.事件の概要は?
本件は、G社を退職したXから、退職強要による「会社都合退職」であったのに「自己都合退職」として処理されたため、自己都合退職の場合の退職金しかもらえず、雇用保険法に基づく求職者給付として基本手当の支給を受ける期間も短縮されたとして、退職金差額と基本手当差額の支払いを求められていたG社が、Xの退職は自発的な「自己都合退職」であり、その処理に誤りはなかったとして、Xにこれらを支払う義務がないことの確認を求める本訴を提起した。
これに対し、Xが不法行為に基づく損害賠償請求として、上記退職金差額と基本手当差額の合計等の支払いを求める反訴を提起して争ったもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<G社およびXについて>
★ G社は、各種ゴム製品および合成樹脂製品の製造販売を主な業とする会社である。
★ Xは、昭和61年11月にG社に採用され、大阪営業所で勤務し、平成7年5月に名古屋本社に転勤となり、13年4月に再び大阪営業所で勤務することとなって以降、生産管理部門にて、得意先(顧客)および仕入先(メーカー)への商品の受発注、入出庫の管理等の業務に従事していた。
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<Xの退職に至るまでの経緯等>
▼ 13年8月頃から、取引先からG社に対して、「支給品が希望納期に入荷されない」、「何度催促しても納期回答はなかなか来ないため、対応に苦慮している」、「女性担当者に対する言葉遣いが荒く、対応も悪い」、「納期遅延商品の督促依頼をするも全く回答がない」など、Xの仕事ぶりに対するクレームが寄せられた。また、G社内からも「受入検査が遅すぎる」、「言い訳が多い」、「責任転嫁する」、「自分の担当の製品しか受入検査しない」等のXに対するクレームがあった。
▼ G社は上記のクレームの内容をXに伝え、口頭で注意を重ねてきたが、Xの勤務態度に変化がなかったため、同年10月、大阪営業所のA所長や本社のB営業部長らはXと面談し、相変わらず取引先や同僚からのクレームが多いことを注意するとともに、Xに反省文を提出させた。
▼ しかし、その後も顧客らからのクレームが治まらなかったため、14年2月、A所長やB部長らはXと面談して、反省点が改善されていない旨を厳しく指摘したところ、Xは上記反省文の欄外に深く反省する旨を記載するとともに、同年3月末までに進退を検討して回答することを約束した。
▼ 同年4月上旬、A所長がXに対し「3月末までに進退を決めて回答することになっているがどうなのか」と確認したところ、Xは「4月末までに回答を延期させてほしい」との書面をA所長宛に提出し、同月下旬、A所長やB部長らに退職する気持ちであることを告げた。
▼ これを受けて、A所長は本社からメールで送られてきた退職願の書式をXに渡し、提出を催促したところ、Xはその場で言われるがまま、不動文字の間の空白を埋める形式で、「一身上の都合により同年7月末日をもって退職する」旨の退職願を作成し、提出した。A所長は直ちにこれを受領し、遅くとも同年5月中旬にはG社代表者によって、Xの退職は承諾された。
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