#358 「プレナス事件」東京地裁(再掲)
2014年4月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第358号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【プレナス(以下、P社)事件・東京地裁判決】(2013年6月5日)
▽ <主な争点>
退職勧奨による退職の意思表示と動機の錯誤の有無など
1.事件の概要は?
本件は、XがP社を退職する旨の退職願(本件退職願)を提出したが、これによる退職の意思表示が無効であるとして同社に対し、地位確認、賃金支払いを求めるとともに本件退職願を提出させる際のP社による退職の強要が不法行為に当たるとして、慰謝料および社宅からの退去費用等相当額の損害賠償を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<P社およびXについて>
★ P社は、飲食店の経営、フランチャイズチェーン店の加盟募集および加盟店の指導業、フランチャイズチェーンシステムによる直営店の経営等を目的とする会社であり、平成16年3月に旧H社を吸収合併した。
★ Xは、平成8年に旧H社との間で雇用契約を締結し、19年7月頃からはP社の東京事務所で人事部労務厚生課サブリーダーとして勤務していた者である。
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<Xが本件退職願を提出するに至った経緯等について>
★ 旧P社社員と旧H社社員に対する退職金制度は積立金の問題等があったため、両社の合併後も二本立てのまま運用されていた。
▼ P社は24年3月に適格退職年金制度が廃止されることとなったため、確定拠出年金制度への移管手続を進めており、23年9月1日、従業員各人に退職金予定額を通知した。Xに対しても会社都合退職での退職金支給額212万6700円などと記載された通知(以下「本件退職予定額通知」という)がされた。
▼ Xは退職金予定額に対する不服から、同日、旧H社に在籍していた上長、同僚など約20名に対し、「今回の退職金の件ですが、例として勤続15年の元H社社員の退職金は中途退職一時金204万円、定年退職一時金240万円と記載されており、今回の支給額は中途退職一時金(自己都合退職時)の支給金額の提示でした。みなさんどう思われますか。ちなみに退職金規程ではP社社員として記載されており、その内容で計算すると500万円以上となります」等と記載したメールを送付した(以下「本件メール送付」という)。
▼ Xは確定拠出年金制度への移行に関する説明会等の担当者であったが、P社人事部ではXには任せられない旨通知するとともに、人事部のA部長の下に出頭を命じた。同部長は同月3日、Xに対して会社を辞めた方がよい旨の退職勧奨を行った。
▼ Xは同月12日、東京事務所に出社し、A部長に電話で本件メール送付に至る経緯を再度説明するとともに、退職しなければならない理由が分からない、退職はしたくない旨を述べるなどしたが、同部長は会社からの信用、信頼が失われている旨を再度述べた。
▼ Xは同月14日、10月5日をもって、会社都合による退職勧奨のため退職する旨記載された退職願(以下「本件退職願」という)をP社に提出した。
3.元社員Xの言い分は?
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