見出し画像

#285 「テレビ朝日ほか事件」東京地裁(再掲)

2011年5月11日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第285号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【テレビ朝日(以下、TA社)ほか事件・東京地裁判決】(2010年5月14日)

▽ <主な争点>
フリーテレビディレクターに制作業務を委託した会社の安全配慮義務等

1.事件の概要は?

本件は、フリーランスのテレビ映像の企画および制作ディレクターであったXが、TA社らの関与していたテレビ番組についての制作業務を請け負ったところ、同社らの安全配慮義務違反により過重な労働に従事させられた結果、くも膜下出血により死亡するに至ったとして、Xの両親であるYおよびZがTA社らに対し、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求(逸失利益約6262万円、死亡慰謝料2800万円、弁護士費用500万円ほか)をしたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<TA社およびX等について>

★ TA社は、テレビ放送事業等を目的とする会社である。

★ 電通テック(以下、DT社)およびディ・コンプレックス(以下、DC社)は、放送番組の企画および制作などを目的とする会社である。

★ X(昭和41年生、死亡当時39歳)は、フリーランスのテレビ映像の企画および制作ディレクターであった者であり、YおよびZはその両親であって、Xの相続人である。

--------------------------------------------------------------------------

<本件業務、Xが死亡するに至った経緯等について>

▼ Xは遅くとも平成17年4月頃までにDC社との間で「翔け!視覚障害のバイオリニスト」と題する番組企画(以下「本件企画」という)の制作業務全般を統括するディレクター業務(以下「本件業務」という)を請け負う旨の契約(以下「本件契約」という)を締結した。

★ なお、本件契約の名義人は日本ニューテレビ(以下、N社)とDC社とされていたが、N社はフリーランスのディレクター等に契約当事者としての名義を貸す会社であり、本件契約の当事者は実質的にXとDC社であった。

▼ Xは本件契約締結後から同年12月20日までの間、本件契約に基づいて本件業務に従事したが、同月7日まではこれに加えて週3回、1日9時間程度、日本テレビのニュース番組である「NNN24」などTA社らとは無関係な他の業務にも従事した。

▼ Xは同月24日午前9時頃、くも膜下出血により死亡した。東京都監察医作成の死体検案書は「Xの直接死因をくも膜下出血、その原因を右椎骨動脈解離、直接には死因に関係しないが、上記の傷病経過に影響を及ぼした傷病名等を高血圧症とし、解剖所見として、頭蓋内の右椎骨動脈本幹、後下小脳動脈分岐部より中枢側の部に解離性動脈瘤の破裂あり」としている。

3.フリーディレクターXの両親(Y・Z)の言い分は?

ここから先は

2,104字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?