#604 「兼松アドバンスド・マテリアルズ事件」東京地裁
2024年1月10日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第604号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【兼松アドバンスド・マテリアルズ(以下、K社)事件・東京地裁判決】
(2022年9月21日)
▽ <主な争点>
飲酒を伴う歓迎会等での入社内定者の発言を理由とする内定取消など
1.事件の概要は?
本件は、K社から採用内定を得て、その後、同社から内定を取り消された(本件内定取消)XがK社に対し、次の各請求を求めたもの。
(1)主位的請求
本件内定取消は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上の相当性を満たさない無効なものである旨主張して、K社に対してする次の各請求
ア 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
イ 労働契約に基づく次の各金員の支払請求
(ア)2018年10月分以降の未払賃金として、同月から本判決確定の日まで、毎月20日かぎり17万8800円(賃金月額29万8000円の6割に相当する金額)およびこれらに対する遅延損害金
(イ)2018年12月以降の賞与として、同月から本判決確定の日まで、毎年12月20日および6月20日かぎり35万7600円およびこれらに対する遅延損害金
(2)予備的請求
本件内定取消は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上の相当性を満たさない違法なものであり、これによって採用に係るXの期待権が侵害されたと主張して、K社に対してする、不法行為に基づく損害賠償314万6880円(Xの年収の6割相当額286万0800円および弁護士費用28万6080円)およびこれに対する遅延損害金の支払請求
2.前提事実および事件の経過は?
<K社およびXについて>
★ K社は、非鉄金属材料・鉄鋼その他金属材料の輸出入および国内販売等を営む商社である。
★ Xは、2018年6月6日付で、K社から採用内定の通知を受けたが、同年9月14日、内定を取り消された者である。
<本件採用内定、本件内定取消に至った経緯等について>
▼ Xは2018年5月、転職エージェントを通じて、K社の求人に応募し、同年6月4日に同社の採用面接を受けた。
▼ K社は同年6月6日付でXを正社員(就労始期:同年10月1日)として採用することを決定し、Xに対してその旨通知した(以下「本件採用内定」という)。
▼ Xは同年9月7日、K社の東北支店(以下「本件支店」という)に赴いて職場見学をした。K社はXから会食の希望を受け、同日夜、歓迎会の趣旨で、Xおよび本件支店の従業員が参加する会食(以下「本件会食」という)を実施した。本件会食は飲酒を伴うもので、一次会から三次会まで実施された。
▼ K社は同年9月14日、Xに対し、本件採用内定を取り消す旨の通知をした(以下「本件内定取消」という)。同社が本件内定取消の通知およびその後の回答書で示した取消の理由(Xの発言)は下記のとおりであった。
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