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#96 「中外炉工業事件」大阪地裁

2005年7月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第96号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【中外炉工業(以下、C社)事件・大阪地裁判決】(2001年3月23日)

▽ <主な争点>
会社の技術資料の持ち出しを理由とする懲戒解雇の効力

1.事件の概要は?

本件は、C社の技術資料等を自宅へ持ち出したことを理由に懲戒解雇され、退職金不支給となったXが懲戒解雇は不当であるとして、退職金の支払い等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<C社およびXについて>

★ C社は、各種工業炉、産業機械、環境設備、燃焼設備等の設計・製作を行う熱技術の総合エンジニアリング会社である。

★ Xは昭和62年にC社に雇用された従業員であったが、台湾のS社向け装置の開発にプロジェクト・マネージャーとして従事していた平成11年12月、C社が推進していた「転進援助制度」* の利用を申し出て退職届を提出し、受理され、12年1月末日をもってC社を退職することになった。

* C社では、10年10月から転進援助制度を実施しており、同制度を利用して定年前に退職する者には、優遇処置として特別加算金が支給されることになっていた。

★ Xは上記退職届とともに、「私はC社を退職するにあたり、次のとおり誓約いたします」、「技術上の情報(図面類、技術計算書類、仕様書類、データ類など)および営業上の情報(顧客リスト類、仕入先リスト類、販売マニュアル類、財務データなど)は一切持ち出しておりません」等と記載された誓約書(以下「本件誓約書」という)をC社に提出した。

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<Xが懲戒解雇されるに至った経緯>

▼ 12年1月5日、C社の人事総務部長Aは総務の女性従業員から「Xが12月中に合計9箱もの段ボール箱を自宅に配送している」との報告を受け、調査したところ、Xが大量の複写をしていることも判明した。

▼ 同月7日、A部長がXを呼び出し、技術資料等持ち出しの事実の有無を確認したところ、Xは当初これを否定したが、持ち出しの事実を認めるに至った。そこで、A部長はXの出勤停止を命じるとともに直ちに資料等を返却するよう指示した。

▼ 同日、A部長、Xの上司にあたるグループマネージャーのB、法務担当のCが同行して、Xの自宅に向かい、Xが持ち出した段ボール箱の内容物を点検したAらはXに私物を返還した残りをC社に配送した。

▼ C社はXが持ち出した資料等の内容を検討した上で行った事情聴取を踏まえ、同月25日、懲戒審査委員会を開催し、Xからも弁明を聞いた。同委員会は審議の結果、Xの上記技術資料等配送が就業規則の懲戒事由に該当するとして、Xに対し、懲戒解雇通知書を交付し、懲戒解雇の意思表示をした(以下「本件解雇」という)。

★ Xが自宅に配送した上記技術資料等には、設計図面、設計計算書、設計基準書、試算資料、トラブル報告書などが含まれていた。

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<C社の就業規則等について>

★ C社の就業規則には次のような定めがある。

第71条 従業員が次の各号の一に該当するときは懲戒解雇に付する。

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