#330 「産業医賠償命令事件」大阪地裁(再掲)
2013年2月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第330号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【産業医賠償命令事件・大阪地裁判決】(2011年10月25日)
▽ <主な争点>
産業医に対する損害賠償請求など
1.事件の概要は?
本件は、自律神経失調症により休職中であったXが勤務先の産業医であるY(内科医。メンタルヘルスについては、産業医向けの講習を毎年1回受講して知識を得ていた)との面談時に詰問口調で非難されるなどしたため、病状が悪化し、このことによって復職時期が遅れるとともに精神的苦痛を被ったとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき逸失利益の一部の賠償および慰謝料等の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<労働者Xおよび産業医Yについて>
★ Xは、昭和62年から財団法人大阪市K協会(以下「勤務先」という)に勤務しているが、自律神経失調症により、平成20年6月30日から21年4月26日まで休職していた者である。
★ Yは、20年11月26日当時、勤務先の産業医を務めていた医師である。産業医は職場の安全衛生、事故の予防、労働環境の改善などを監視し、休職中の職員の職場復帰の支援や職場との調整を図る立場にあるが、Y自身、内科を専門とする医師であって、メンタルヘルスについては産業医向けの講習を毎年1回受講して知識を得ていた。
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<Xの休職、本件面談等について>
▼ Xは平成9年6月に自律神経失調症と診断され、Nクリニックの心療内科に通院していたが、20年6月9日に勤務先での職務担当が変更になったことを契機に状態が悪化した。
▼ Xは同月29日から勤務先を病気休職し、2週間ごとにNクリニックに通院し、自宅療養を継続しており、同年10月には3ヵ月ごとの病気休職期間が切れる21年1月をめどに職場復帰を目指す程度にまで状態が安定していた。
▼ Xは20年11月に入って、勤務先の上司であるA係長から産業医による面談を打診され、これに応じることとした。YはA係長から依頼を受け、同月26日、勤務先近くの喫茶店にて、同係長の同席のもと、Xと面談した(以下「本件面談」という)。
▼ Xは同年12月5日、Nクリニックにて、従来は改善傾向にあったが、本件面談後、明らかに症状が悪化しているとして、21年1月31日まで自宅療養が必要である旨の診断を受けた。
▼ Xはその後も概ね2週間に1度のペースでNクリニックに通院を続け、21年3月26日、同クリニックで同年4月27日から就業可能との診断を受けた。
3.労働者Xの言い分は?
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