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#386 「東京都教育委員会事件」東京地裁(再々掲)

2015年5月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第386号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【東京都教育委員会事件・東京地裁判決】(2014年2月26日)

▽ <主な争点>
校長に対する傷害行為を理由とする懲戒免職処分の取消請求など

1.事件の概要は?

本件は、東京都立甲高等学校の主幹教諭であったXが平成22年8月、同校校舎内で、同校校長に対する傷害行為に及んだところ、そのことを理由に東京都教育委員会から、23年1月、地方公務員法29条(懲戒)1項1号および3号に基づく懲戒免職処分(本件処分)を受けたことから、本件処分の違法性を主張して、その取消しを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<X、A校長らについて>

★ X(昭和38年生)は、平成2年4月、東京都公立学校教員として採用され、東京都立乙養護学校等の各教諭を経て、19年4月、甲高等学校に転任し、以後、同校において、理科主任および理科(生物)指導のほか保健主任を担当していたところ、20年4月以降、甲高校の主幹教諭として、理科主任等のほか進路指導主任を担当していた者である。なお、Xは本件処分以外に懲戒処分歴を有していない。

★ 甲高校における20年4月から23年3月までの間の校長はAであり、21年4月から24年3月までの間の副校長はBであった。

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<本件処分、本件訴えに至った経緯等について>

▼ 東京都教育委員会(都教委)は23年1月、Xに対し、地方公務員法(地公法)29条1項1号および3号に基づく懲戒免職処分を発令した(以下「本件処分」という)。

★ 本件処分の処分理由は、Xが22年8月27日午後4時頃、甲高校玄関において、右手の拳でA校長の顔面を殴り、同日午後6時頃、同高校東側階段の踊り場付近において、A校長に対しパイプ製のいすを振り下ろし、同校長の右側頭部および右肘に当て、上記玄関において、右腕で同校長の首を絞め、「右第4中手骨骨折、頭部挫傷、右肘打撲、左肩挫傷および頸椎捻挫による加療約2ヵ月を要する傷害」を負わせたというものである。

▼ Xは本件処分を不服として、東京都人事委員会(都人委)に対し、23年2月、審査請求を行ったが、都人委は24年6月、Xの審査請求を棄却する旨の裁決をした。その後、Xは同年12月、本件処分の取消しを求める本件訴えを提起した。

▼ XはA校長に対する傷害の被疑事実により、23年3月、警視庁甲警察署の警察官に逮捕され、同月、東京地方裁判所立川支部に傷害の公訴事実に起訴され、同年6月、同裁判所同支部において、傷害罪により懲役1年6月、執行猶予3年間の有罪判決(以下「本件刑事判決」という)の宣告を受けた。Xは本件刑事判決に対して控訴せず、本件刑事判決は確定した。

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<地公法における定めについて>

地公法27条(分限及び懲戒の基準)3項は、職員が同法で定める事由による場合でなければ、懲戒処分を受けることがない旨を規定するところ、地公法29条(懲戒)1項は、職員が同法等に違反した場合(同項1号)または全体の奉仕者たるにふさわしくない非行に及んだ場合(同項3号)には、当該職員に対する懲戒処分として、戒告、減給、停職または免職の処分をすることができる旨(同項柱書)を規定する。

地公法33条(信用失墜行為の禁止)は、職員がその職の信用を傷つけ、または職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない旨を規定する。なお、同法28条(降任、免職、休職等)4項、16条(欠格条項)2号は、職員が禁錮以上の刑に処せられた場合には、当然にその職を失う旨を規定する。

3.教諭Xの主な言い分は?

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