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#469 「品川労働基準監督署長事件」東京地裁(再掲)

2018年9月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第469号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【品川労働基準監督署長(以下、S労基署長)事件・東京地裁判決】(2016年10月27日)

▽ <主な争点>
業務上腰痛の認定基準、労災保険法上の業務起因性など

1.事件の概要は?

本件は、長時間にわたり前傾姿勢でパンの製造作業に従事したことにより腰部痛、背部痛を発症したとして、XがS労基署長に対し、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく療養補償給付、休業補償給付を請求したところ、いずれの請求についても支給しない旨の処分を受けたため、処分取消しを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは、平成23年11月、甲社に入社し、25年3月までパンの製造業務に従事した者である。

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<本件処分に至った経緯等について>

★ Xの作業(以下「本件作業」という)はパンの生地を鉄板に並べ、生地をホイロ器に入れて発酵させた後、表面に卵を塗り、オーブン釜で焼き、焼き上がったパンを袋に詰めるという内容であった。本件作業の各工程はすべて「前傾姿勢」を伴う作業を含んでいたが、長時間にわたり同一の前傾姿勢を「持続」することを強いられるものではなかった。

▼ Xは25年3月に乙接骨院を受診し「左背部上部挫傷・腰部捻挫」の診断を受け、同年4月に丙総合病院を受診して「腰痛症・頸部痛・背部痛」の診断を受けた(以下「本件傷病」という)。

▼ Xは工場内で長時間、前傾姿勢でパンの製造作業に従事したため、本件傷病を発症したとして、S労基署長に対し、同年5月から8月にかけて労災保険法に基づく療養補償給付、休業補償給付を請求したが、同年12月、同労基署長は腰部の痛みと業務との間に相当因果関係は認められないとし、いずれも不支給とする旨の処分(以下「本件処分」という)をした。

▼ Xは本件処分を不服として、東京労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をしたが、同審査官は26年8月、これを棄却する旨決定した。

▼ Xは労働保険審査会に対し、再審査請求をしたが、同審査会は27年8月、これを棄却する旨裁決した。Xは同月、本件処分の取消し等を求めて本件訴訟を提起するに至った。

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