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#597 「ケイ・エル・エム・ローヤルダッチエアーラインズ事件」東京地裁

2023年10月4日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第597号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【ケイ・エル・エム・ローヤルダッチエアーラインズ(以下、K社)事件・東京地裁判決】(2022年1月17日)

▽ <主な争点>
客室乗務員として乗務するための訓練契約が労働契約に該当するかなど

1.事件の概要は?

本件は、K社との間で、契約期間を2014年5月27日から2017年5月26日までの3年間とする有期労働契約(本件労働契約1)および契約期間を2017年5月27日から2019年5月26日までの2年間とする有期労働契約(本件労働契約2)を締結し、客室乗務員として勤務していたAら3名が、本件労働契約1の前に締結した訓練契約(本件訓練契約)が労働契約に該当し、有期労働契約の通算契約期間が5年を超えるから、本件労働契約2の契約期間満了日までにK社に対して期間の定めのない労働契約の締結の申込みを行ったことにより、労働契約法18条1項に基づき、同社との間で期間の定めのない労働契約が成立したものとみなされると主張して、K社に対し、(1)期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、(2)本件労働契約2の期間満了日の翌日(2019年5月27日)から本判決確定の日まで毎月末日かぎり36万9611円の賃金およびこれらに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

これに対し、K社は、本件訓練契約は労働契約に該当せず、Aらとの間で締結した有期労働契約の通算契約期間は5年を超えないから、労働契約法18条1項の要件を欠く旨を主張して争っている。

2.前提事実および事件の経過は?

<K社およびAら3名について>

★ K社は、オランダに本社を有する航空会社である。同社はアムステルダム・スキポール空港を拠点として世界各国の空港に就航し、日本においては成田国際空港および関西国際空港に就航している。

★ Aは1984年生まれの女性であり、Bは1981年生まれの女性であり、Cは1973年生まれの女性である。Aら3名は2013年、K社の客室乗務員採用選考に応募し、同年11月下旬頃、選考を通過した旨の通知書を受領した。


<本件訓練契約、本件労働契約、Aらが雇止めに至った経緯等について>

▼ Aらは2014年3月24日、K社との間で、同日から5月26日までを訓練期間(以下「本件訓練期間」という)とし、客室乗務員認証を取得するための訓練および機種別訓練を実施する旨の訓練契約(以下「本件訓練契約」という)を締結した。

★ オランダはEU加盟国であるところ、EU委員会規則には、民間航空機の客室乗務員について、客室乗務員認証を取得し、かつ、機種別訓練を修了することを要するとの定めがある。

▼ Aらは訓練を修了し、同年5月下旬頃、K社との間で3年間の有期労働契約(以下「本件労働契約1」という)を締結し、客室乗務員として勤務を開始した。同契約は2017年の期間満了時に更新され、Aらは新たに契約期間を同年5月27日から2019年5月26日までの2年間とする有期労働契約(以下「本件労働契約2」という)を締結した。

★ 2019年4月時点におけるAらの給与は、基本給35万5811円、住宅手当1万3800円の合計36万9611円であった。

▼ Aらは2019年1月29日頃、K社に対し、労働契約法18条1項に基づき、同年5月27日を始期とする期間の定めのない労働契約の締結の申込みを行った。

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