#617 「学校法人 A学園事件」福岡地裁小倉支部
2024年7月17日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第617号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【学校法人 A学園事件・福岡地裁小倉支部判決】(2023年9月19日)
▽ <主な争点>
勤務地限定契約と配転命令など
1.事件の概要は?
本件は、A1法人が設置、運営していた甲中学校・高等学校(本件学校)において数学科教員として勤務していたXが、A1法人から乙中学校・高等学校(乙校)への配転命令を受けたことにつき、同命令は無効であると主張して、A1法人に対し、乙校での就労義務がないことの確認(事件1)を求めるとともに、本件学校の設置者がA1法人から、新設されたA2法人に変更されたことに伴い、Xの労働契約上の権利関係がA1法人からA2法人に承継されたと主張して、A2法人に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および乙校での就労義務がないことの確認(事件2)を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<A1法人、A2法人およびXについて>
★ A1法人は、乙中学校・高等学校(以下「乙校」という)等を設置する学校法人であり、2008年9月、甲中学校・高等学校(以下「本件学校」という)等を設置していた学校法人B(消滅法人)を吸収合併した。
★ A2法人は、2023年4月に設立された学校法人であり、現在、本件学校等を設置、運営している。
★ Xは、1993年4月、B法人との間で常勤講師として採用され、1994年4月、期間の定めのない労働契約(以下「本件労働契約」という)を締結して甲高等学校教諭の辞令を受け、以後、本件学校の数学科教員として勤務をしていた者である。
<本件解雇、前件訴訟の経緯等について>
▼ A1法人は2017年8月22日付で、Xに対する解雇の意思表示(以下「本件解雇」という)をした。
▼ Xは本件解雇が無効であるとして、福岡地裁小倉支部に労働契約上の権利を有する地位の確認等を求める訴訟を提起したが、同裁判所は本件解雇は有効であるとして、Xの請求を棄却する判決をした。
▼ その後、控訴審において、福岡高裁は2020年8月、本件解雇は無効であると認定した上で、XがA1法人に対して労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、本件解雇の翌月以降の賃金の支払を命じる判決(以下「前件控訴審判決」という)を言い渡した。
▼ A1法人は上告受理申立てをしたが、最高裁は2021年1月、上告を受理しない決定をした。
▼ しかし、本件解雇が無効であることが訴訟上確定した後もXは本件学校の教職員として就労を命じられることはなく、また、A1法人の理事長から本件学校の敷地内への立ち入りの禁止を命じられていた。
<本件配転命令、A2法人の新設等について>
▼ A1法人は2021年10月、Xに対し、乙校において数学教員として勤務することを命じる配転命令(以下「本件配転命令」という)をした。
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