#522 「エアースタジオ事件」東京地裁(再掲)
2020年10月14日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第522号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【エアースタジオ(以下、A社)事件・東京地裁判決】(2019年9月4日)
▽ <主な争点>
劇団員の裏方業務の遂行に係る労働基準法上の労働者性など
1.事件の概要は?
本件は、A社の下で劇団員として活動していたXが法定労働時間に対する最低賃金法による賃金の未払があるとしてその支払等を求めるとともに、A社がXを、ひと月に2日程度しか休日を取得できず、1日3時間程度しか睡眠時間を取得できない環境で長きにわたり労務提供させた行為および同社が従業員をして行わせた暴言、脅迫が不法行為に該当するとし、使用者責任に基づく損害賠償請求として慰謝料等の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<A社およびXについて>
★ A社は、舞台制作、映像制作、芸能プロダクション、スタジオ経営、飲食店経営等を目的とする会社であり、劇団(以下「本件劇団」という)を運営している。本件劇団は両国と東日本橋にスタジオを構え、ほぼ毎週プロデュース公演を行っているほか、年に1回、本公演という名目で外部の劇場を利用して公演を行っている。
★ Xは、平成20年12月頃、本件劇団に仮入団し、21年8月、入団契約を締結して劇団員として活動し、28年5月に退団した者である。
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<Xが退団し、本計訴訟に至った経緯等について>
▼ A社は劇団員に対し、当初金銭を全く支給することはなかったが、25年4月以降、Xを含めた劇団員に対して月額6万円を支給するようになった。
▼ A社は24年頃、カフェ(以下「本件カフェ」という)を開店し、Xも店員として勤務していた。賃金は長時間のシフト(午後4時から午前0時まで、または午前0時から午前5時まで)の場合、1勤務当たり5000円、急遽シフトに入ることになった場合には1時間当たり1000円であった。
▼ Xは本件劇団を退団後の28年10月、A社に対し、未払賃金の請求を行う旨の通知をした。
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