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#46 「シティズ事件」東京地裁

2004年7月14日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第46号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 参考条文

★ 労働基準法 第20条(解雇の予告)

「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。」

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■ 【シティズ(以下、C社)事件・東京地裁判決】(1999年12月16日)

▽ <主な争点>
身元保証書不提出による解雇

1.事件の概要は?

本件は、金銭貸し付け等を業とするC社には就業規則に「社員採用の際は、身元保証書を提出しなければならない」旨の規定があるところ、Hが同社からの身元保証書の提出要求を拒否したため、予告なく解雇した。これに対して、Hが解雇予告手当等の支払いを請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<C社およびHについて>

★ C社は、金銭貸付け等を業とする会社である。

★ Hは平成10年2月、C社との間で雇用契約を締結し、新宿支店営業部に配属された者である。

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<Hが退職するに至った経緯等について>

▼ 新宿支店営業部の指導員であったSは、Hと同様にC社に新規採用された者全員に対し、身元証明書、秘密保持誓約書および誓約書を手渡し、同社あてに提出するよう申し渡したが、Hはいずれの書面も提出しなかった。

▼ C社は同年5月、Hを銀座支店営業部に異動させた。同支店副支店長だったOは、身元証明書、秘密保持誓約書および誓約書を提出していない4名(Hを含む)に対して、上記書類の提出を求めたが、4名は同年7月6日までにいずれの書面も提出しなかった。

▼ 同年7月7日、Oは上記書面を提出していない4名に対して、それぞれ個別に秘密保持誓約書と誓約書についてはその場で書かせて、身元保証書については同月中に提出させることにした。OはHに対し、身元保証書を提出しなければ8月から貸付け業務をさせないと申し渡した。Hはこれに対して、格別異議を述べなかったが、7月31日までに身元保証書を提出しなかった。

▼ Oは同年8月3日、Hに対し、身元保証書が7月中に提出されなかったので辞めてもらうことにすると言って、自己都合で退職すると記載した辞表の提出を求めた。

▼ Hは身元保証書を提出しなかったことを理由に解雇されるのはやむを得ないと考えてC社を退社することには素直に応じたが、辞表については会社都合で退職すると記載するのなら提出するが、自己都合による退職と記載するのなら提出しないと答え、Oに対し離職理由を解雇と記載した雇用保険被保険者離職票の交付を求めたところ、Oはこれを拒否した。

★ Hは以前に金融機関のA社に勤務しており、同社から身元保証書の提出を求められた際にはこれを提出していた。

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