#518 「三村運送事件」東京地裁(再掲)
2020年8月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第518号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【三村運送(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2019年5月31日)
▽ <主な争点>
トラック運転手の休憩施設等滞在時間の労働時間性の有無など
1.事件の概要は?
本件は、M社の従業員として貨物自動車(トラック)の運転業務等に従事するAら9名が平成26年7月16日から28年8月15日までの期間(以下「請求対象期間」という)に行った時間外労働、休日労働および深夜労働に係る労働基準法37条1項および4項所定の割増賃金ならびに所定労働時間を超えるが法定労働時間を超えない労働(法内労働)に係る賃金が支払われていないと主張して、M社に対し、未払割増賃金等の支払を求めたもの。
本件の争点は、Aらが長距離運行に際して高速道路上に設置されているサービスエリア(SA)等に滞在している時間が労働基準法上の労働時間に該当するか否かという点である。
2.前提事実および事件の経過は?
<M社およびAら9名について>
★ M社は、一般貨物自動車運送事業等を目的とする会社であり、労働基準法138条所定の中小事業主に該当する。
★ A・B・C・D・E・F・G・H・Iら9名は、M社との間で労働契約を締結し、請求対象期間において、埼玉県内の営業所に所属するトラックの運転手として稼働し、北海道から沖縄まで全国各地に主に医療用の精密機器等の輸送を行っていた。
★ Aらは(1)主に短距離の輸送業務(以下「地場運行」という)に従事する者と、(2)地場運行に加えて、長距離の輸送業務(M社の指示を受けて営業所の出庫から帰庫までの走行距離が400kmを超える運行)にも従事する者とに区分され、A・F・H・Iは短距離運転手であり、その他の者は長距離運転手である。
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<Aらの休憩施設等滞在時間の過ごし方等について>
[積載貨物の取扱い]
★ M社は積載貨物について、その価額が500万円以下の場合は同社の負担により、同額を超える場合は顧客の負担により、いずれも保険に加入し、積載貨物が輸送中に損壊したり、盗難に遭ったりした場合には保険により補償されるようにしていた。また、M社はAらに対し、トラックから離れずに積載貨物を監視するよう指示したことはない。
[深夜早朝の業務指示]
★ M社はAらに対し、午後10時以降に業務に関する指示をしたことはなかった。
[長距離運行中のSA等における滞在時間の過ごし方]
★ AらはSA等において、車内で睡眠をとったり、食事をとったり、テレビを見たり、トラックを駐車した上でお手洗いに行ったり、飲食物を購入したり、SA等に併設されている入浴施設を利用したりするなどして過ごしていた。
★ M社はAらに対し、SA等においてトラックから離れたり、上記のような行動をとったりすることを特に禁止しておらず、休憩や宿泊等をとる時期、場所等についても逐一指示することはなく、Aらの裁量に委ねていた。
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