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#211 「ヤマト運輸事件」東京地裁

2008年7月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第211号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ヤマト運輸(以下、Y社)事件・東京地裁判決】(2006年4月7日)

▽ <主な争点>
自社構内での従業員の過失による下請け従業員への車両衝突事故と使用者責任

1.事件の概要は?

本件は、D社の従業員であったXが、Y社の営業所構内で同社の従業員であるCの運転するフォークリフトがXに衝突する事故(以下「本件車両事故」という)に遭ったことによる損害賠償ならびにY社の上記営業所へ出入りしている業者の従業員MおよびNとY社の従業員であるA、Bが共謀してXに暴行を加えた事件(以下「本件暴行事件」という)が共同不法行為に該当するとして、受けた被害による損害賠償をそれぞれ請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Y社、XおよびAらについて>

★ Y社は、東京都中央区に本店を有し、運輸事業を主体として手広く事業を営む、東京証券取引所1部上場会社である。

★ Xは平成13年5月から、D社のトラック運転手として働くようになり、同社がY社から業務委託を受けていたH支店とJサテライトと称される顧客配送場所間の荷物の運送を担当していた。

★ Aは本件事故当時、Y社H支店の支店長であり、B、CはいずれもAのもとでフォークリフト運転などの作業に当たっていた。

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<本件車両事故およびその後の経緯等について>

▼ 平成13年7月、Xがいつもの通り、H支店の荷さばき場において荷物の積み込み作業に従事していたところ、後方からCの運転するフォークリフト(以下「本件車両」という)が後進してきてXの背後に衝突し、Xは前方へはじき飛ばされた。その際、Xの右足首が本件車両の左後輪の下敷きになった。

★ 当時、上記の荷さばき場においては作業員と荷物ボックスが入り乱れており、その中をCがフォークリフトのバック・ブザーが鳴らないようにスイッチを切りながら運転していた。Y社は、早朝にフォークリフトのバック・ブザーが近隣住民に聞こえないように配慮して、鳴らさないように指導していた。

★ Y社における運転者安全手帳中のフォークリフト安全作業マニュアルには、「荷物ボックスを運ぶときは原則として、バック運転で安全を確認しながら行うこと、後方の障害物の有無、他の作業者の状況を確認しながら行うこと、速度を落として、後ろを振り向き慎重に走行すること、構内のフォークリフトの走行通路の標示・エリアを厳守し、走行中は人が最優先であること」などが明記されている。

▼ Xは事故後、右足の痛みを感じたが、D社やY社に迷惑がかからないように仕事を続けた。しかし、翌日になっても痛みが治まらなかったため、整形外科で治療を受け、右第一中足骨骨折の正式診断を得た。

▼ XはD社やY社から、本件車両事故に対する何らかの補償・対応があると思い、連絡を待ったが、何の補償の連絡もなかったので、同年8月下旬、職場に復帰した。

▼ D社は、労務担当顧問の社会保険労務士の指導にしたがい、1ヵ月間の休業補償給付支払請求を行い、Xに関する「労働者死傷病報告」において、X本人による自損事故という報告書が労働基準監督署に提出され、また、Xの療養補償給付請求についても、災害の原因が自損事故であるとして提出された。

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<本件暴行事件等について>

▼ 14年11月、Y社のH支店構内で、からかいの興が昂じて、NがXを羽交い絞めにしたり、MがXの顔面を殴打したりする暴行を加え、これによりXは前歯2本を折るなどの傷害を負った。

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