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#207 「東京自転車健康保険組合事件」東京地裁(再掲)

2008年5月7日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第207号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【東京自転車健康保険組合(以下、T組合)事件・東京地裁判決】(2006年11月29日)

▽ <主な争点>
整理解雇と不法行為

1.事件の概要は?

本件は、T組合が職員であるXを整理解雇したところ、Xが当該整理解雇は無効であると主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および解雇の意思表示後の賃金、賞与の支払いを求めるとともに、不法行為に基づき300万円の慰謝料を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<T組合およびXについて>

★ T組合は、健康保険法に基づき設立された公法人であり、国の健康保険事業全般を代行することを主たる業務としている。同組合の加入者は、主に自転車および原動機付き自転車の製造、関連部品製造、卸売、競輪関係団体などであり、労働者およびその被扶養者の業務外の事由による疾病、負傷もしくは死亡、出産に関する保険給付を行い、疾病予防等の保険事業を営んでいる。

★ T組合には総務課と業務課の2つの部署があり、これ以外に健康相談室があるが、これは独立した部署ではなく、毎週木曜日の午前中に2時間だけ開かれているものであった。また、同組合の職員数は平成15年1月末時点で8名、16年1月末時点で7名、17年1月末時点で8名であった。

★ Xは、保健師および看護師の資格を有していたところ、平成10年12月にT組合との間で期間の定めのない労働契約を締結した。Xは健康相談室で業務を行うほか、総務課において、部長の指揮の下、他の職員と同様に日常業務を行っていた。

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<本件整理解雇に至った経緯等>

★ T組合の被保険者数は年々減少してきているが、同組合の収支は平成10年度から16年度まで7期連続黒字であり、内部留保額も多く、財政的には当面心配のない状況にあった。

▼ 16年9月、T組合は従業員に対し、現行の退職金規程を改定し、17年3月末日付で全員退職の手続きをし、同日までの退職金を清算し、翌4月1日付で全員再雇用するとの案を提示したが、Xらは回答を留保した。

▼ 同年12月、T組合のA理事長は退職金、賃金の改定を理事会で決定したと述べ、退職金を約70%減額する旨の改正案を提示したところ、Xらは改正の理由や必要性を質問したが、A理事長らは理事会の決定であると述べるにとどまった。

▼ Xらは労働基準監督署に労働相談をし、17年1月、T組合を相手方として、労働条件の一方的な不利益変更無効の確認を求め、労働局による助言、指導の申請を行った。同月、労働局はA理事長らを呼び、助言指導を行った。

▼ 同年2月、A理事長らはXら職員に退職金規程改定について説明を行ったが、その際、Xらの労基署に対する相談行為等は理事会に反旗を翻したことになると述べるなど、Xらを納得させる説明はなされなかった。

▼ 結局、T組合は同月、Xら職員に対し、退職金規程改定はせず、従前どおりの規程を適用すると発表した。一方、同月の理事会で健康相談室の廃止が決定された。

▼ 同年4月、XはT組合のB常務理事に対して妊娠していること、里帰り出産を予定していることを伝えたが、後日職員全員に配布された同年12月までの当番勤務表にはXの名前も記載されていた。

▼ 同月、A理事長はXに対し、解雇予告通知書を交付し、整理解雇の意思表示をした(以下「本件整理解雇」という)。Xは解雇予告通知書の解雇理由に「事業の運営上のやむを得ない事情により、健康相談室の廃止を行う必要が生じ、他の職務に転換させることが困難なため」と記載されていることについて、Xの健康相談室での勤務時間は週2時間であると述べたところ、A理事長は「そんなの知らなかった」と主張し、Xの代わりに別の人を雇うことが決まっていると述べた。

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